日本大百科全書(ニッポニカ) 「最大光度」の意味・わかりやすい解説
最大光度
さいだいこうど
天体の明るさが実際に、あるいは見かけ上変化する場合、もっとも明るく見えるときの光度のこと。極大光度ともいう。惑星の見かけの光度は、水星は外合(がいごう)のころ、金星は最大離角と内合(ないごう)の中間で、外惑星では衝(しょう)のころに最大光度になる。惑星では、最大光度のうちもっとも条件がよい場合の極限の明るさを極大光度といい、水星はマイナス2.4等、金星はマイナス4.7等、火星はマイナス3.0等、木星はマイナス2.8等、土星はマイナス0.5等である。また月は満月のときでマイナス12.6等。
変光星では、脈動変光星や食変光星のように周期的変光を繰り返す場合は、1周期内でもっとも明るく(暗く)なったときの光度を極大光度(極小光度)といい、新星や超新星のように変光が周期的でない場合は、もっとも明るく(暗く)なったときの光度を最大光度(最小光度)ということが多い。たとえば脈動変光星のケフェウス座δ(デルタ)星は極大光度の等級は3.48等で極小光度の等級は4.37等、長周期変光星のミラはそれぞれ2.0等と10.1等である。食変光星のアルゴルは主星と伴星がともに見えているときの極大光度は2.12等で主星が伴星に隠される主極小光度は3.39等である。新星の最大光度は、爆発前の静穏時の等級より9~13等明るくなる。1918年に出現したわし座新星V603 Aqlの最大光度は見かけの等級がマイナス1.1等まで明るくなった。新星の最大光度の絶対等級(天体を地球から32.6光年の距離に置いたときの等級)はマイナス6等~マイナス8等であるものが多いが、マイナス9等よりも明るくなるものもある。星の一生の最期を飾る超新星の最大光度は、超新星が見つかった銀河全体の明るさに匹敵するほど明るくなる。われわれの銀河系内で爆発した1006年の超新星の最大光度は見かけの等級がマイナス8等~マイナス10等といわれている。1054年に出現した超新星は見かけの等級がマイナス4等~マイナス5等まで明るくなった。Ⅰa型超新星の最大光度は青色B(0.44マイクロメートル)の絶対等級でマイナス19.2等前後で、どのⅠa型超新星でも最大光度はだいたい一定なので、宇宙について調べるときの標準光源として使われる。Ⅱ型超新星の最大光度は平均して青色B絶対等級でマイナス18等前後であるが、それぞれの超新星で個性があり最大光度はばらつく。
[山崎篤磨]
『戎崎俊一著『ゼミナール宇宙科学』(1995・東京大学出版会)』