標準光源(読み)ヒョウジュンコウゲン

デジタル大辞泉 「標準光源」の意味・読み・例文・類語

ひょうじゅん‐こうげん〔ヘウジユンクワウゲン〕【標準光源】

物体の色を測定するために指定された光を照射する人工光源CIE国際照明委員会)により、相対的な分光分布を定めた標準イルミナント標準の光)AおよびD65を照射する具体的な光源として、A光源D65光源の2種類が規定されている。
天文学において、地球から宇宙のある天体までの距離を測定する際、絶対等級があらかじめわかっており、見かけの等級と比較することで距離を見積もることができるような天体。変光周期が長いほど絶対等級が明るくなるケフェウス型変光星、最大の明るさがほぼ一定となるⅠa型超新星などがある。→宇宙の距離梯子

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「標準光源」の意味・わかりやすい解説

標準光源
ひょうじゅんこうげん

物体色の観察の際に用いるように規定された光源。物体色を測定するには、それを照明する光の性質を一定に規定しておく必要がある。JIS(ジス)(日本工業規格)はこれにこたえて標準の光AとD65の二つを規定している。これらの標準の光は光の性質として相対分光分布をきちんと決めたものであって、無形である。測色計算には無形のままで差し支えないが、物体色を観察する場合には、具体的な光源が必要である。それが標準光源である。JISが規定する標準光源は標準光源Aと常用光源D65であって、それぞれの標準の光に対応する。なお、2000年(平成12)以降、厳密性と他の規格との整合性から、標準の光にかわって標準イルミナントという用語が優先的に使用されるようになった。また、それまで規定されていた標準の光Cは実用性がないことから除かれた。

 標準イルミナントA(標準の光A)は絶対温度2856K(ケルビン)の完全放射体(黒体)から発する光で、標準光源Aは色温度約2856Kになるように点灯した透明バルブのガス入りタングステン電球である。

 標準イルミナントD65(標準の光D65)は紫外・可視を通じた波長領域において、色温度約6500KのCIE昼光(国際照明委員会が定めた自然の昼光を代表する測色用基準の光で、分光分布で示される)の相対分光分布を規定したものである。それを具体化したのが常用光源(準標準光源と考えてよい)D65であって、特製の蛍光ランプでその形式と性能が1988年(昭和63)にJISに定められている。これを常用光源蛍光ランプD65という。

 別種の標準光源には、標準電球のほか、次のような種類がある。クレフト形水銀ランプは規定の構造をもった石英ガラスによる高圧水銀ランプであって、260~590ナノメートルの波長範囲における放射輝度が規定されている。キセノン標準白色光源は規定の構造をもったキセノンガスによる放電ランプであって、300~780ナノメートルの波長範囲における相対放射強度分布が規定されている。これら2種の標準光源は紫外・可視の波長領域における標準放射源として、あるいは蛍光発光の観察用などに使われる。また、黒鉛高温黒体炉は、2500Kという高温で使用可能の完全放射体であって、近紫外・可視・近赤外の波長範囲における標準放射源として用いられる。

[東 尭・高橋貞雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「標準光源」の意味・わかりやすい解説

標準光源 (ひょうじゅんこうげん)
standard light source
standard lamp

光,放射および色の測定において,ある量の一定値を維持し,測定の基準として用いられる光源。例えば光度測定には光度標準電球を用いる。これを指定の電圧または電流で点灯したとき,特定の方向の光度値が与えられているので,被測定光源の光度はこれとの比較測定で求めることができる。光度標準電球は口金を下にした姿勢で用い,フィラメントは鉛直な一平面内にM字形に張られていて,この平面に垂直な方向,すなわち水平方向の光度値が与えられている。一般にはその色温度の値も与えられているから色温度の標準としても用いられる。光源の全光束の測定には全光束標準電球が用いられる。その構造は一般照明用の白熱電球とほぼ同じであるが,透明バルブを使用し,フィラメントの形状やその支持方法にくふうがこらされている。測色では,物体の色はそれを照明する光源によって変化するので,物体色測定用標準光源として一般に国際照明委員会(CIE)が規定した標準光源を用いる。これには白熱電球を代表する標準光源A(色温度2856Kで点灯した白熱電球),これに特定のフィルターをかけて直射太陽光を代表させた標準光源B(色温度約4870K),同様に別の特定のフィルターをかけて昼光を代表させた標準光源C(色温度約6770K)がある。このほか実測の昼光の分光分布に基づいてより精密に昼光を代表させた標準の光D65(色温度約6500K)があって,分光分布が数式により与えられており測色計算の基本として用いられているが,これを実現する光源はまだ研究中である。分光放射測定用の標準光源としてはプランクの放射則に従う黒体炉がもっとも基本的であるが,可視域では白熱電球を代りに用いることが多い。赤外域では炭化ケイ素の白熱体など,紫外域では水素,重水素,キセノン,水銀,アルゴンなどの中での放電を利用した放電ランプやアーク灯を安定化したものなどが用いられる。
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化学辞典 第2版 「標準光源」の解説

標準光源
ヒョウジュンコウゲン
standard illuminant

物体の色を測るときに基準として用いる人工光源.物体の色は照明光源の分光分布によってかわるので,色を表示するときは照明光源を付記することになっている.国際照明委員会では,A,B,Cの3種類の異なる分光分布をもつ光源を標準光源として採用している.A光源は,ガス入りタングステン電球からの光で,2856 K の色温度をもち,白熱電球を代表する.BとC光源は,Aに複数の溶液フィルター(Davis-Gibsonフィルター)をかけたもので,Bは4874 K の色温度に近似し,正午の太陽光に近く,Cは6774 K の色温度に近似し,青空を含む平均昼光に近い.しかし,これらの光源だけでは用途によっては不便なので,D65,D55,D75 などの光源も規定されている.ただし,わが国ではB光源はほとんど使われていない.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「標準光源」の意味・わかりやすい解説

標準光源
ひょうじゅんこうげん
standard illuminant

色を決めるための標準となる光源。物体の色はそれを照明する光源の分光分布によって異なって見えるので,国際照明委員会 CIEでは協約により次のA,B,Cの3種の光源を標準光源に規定している。A光源は色温度 2854Kの普通のガス入りタングステン白熱電球である。B,C光源はA光源に指定されたフィルタをかけて色温度を 4870K,6840Kに近似させたもので,前者は平均正午太陽光,後者は平均昼光に相当する。通常はC光源を用いて色を決める。また光源の光度 (明るさ) は特定の光源との視覚による比較によって決められる。これに用いられる光度の規定された特定の光源を光度標準光源という。

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百科事典マイペディア 「標準光源」の意味・わかりやすい解説

標準光源【ひょうじゅんこうげん】

物体の色は照明光源によって変わるため,その標準として用いられる光源。物体色の測定用には,1931年国際照明委員会(CIE)が規定したA,B,C3種がある。A光源は色温度2856Kに点灯したガス入りタングステン電球から出る光。他の二つはAにそれぞれ規定の溶液フィルター(デービス・ギブソン・フィルター)をかけたもので,B光源の色温度は4874Kで正午の太陽光とほぼ同性質,C光源の色温度は6774Kで青空光を含む太陽光とほぼ同性質。

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