月下氷人(読み)ゲッカヒョウジン

デジタル大辞泉 「月下氷人」の意味・読み・例文・類語

げっか‐ひょうじん【月下氷人】

《「月下老人」と「氷人」との合成語男女の縁を取り持つ人。仲人なこうど

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精選版 日本国語大辞典 「月下氷人」の意味・読み・例文・類語

げっか‐ひょうじん【月下氷人】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「月下老人」と「氷人」とが結合してできた語 ) 男女の縁をとりもつ人。媒酌人。なこうど。月下老。月下老人。月下翁
    1. [初出の実例]「計らず出逢うたのは、月下氷人のひき合せ」(出典:歌舞伎・階子乗出初晴業(1892))

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四字熟語を知る辞典 「月下氷人」の解説

月下氷人

男女の縁をとりもつ人。媒酌人。なこうど。

[使用例] 時雄は芳子の師として、この恋の証人として一面月下氷人の役目を余儀なくさせられたのであった[田山花袋蒲団|1907]

[使用例] まるでもう、自分の更生の大恩人か、月下氷人のように振る舞い、もっともらしい顔をして自分にお説教めいた事を言ったり、また、深夜、酔っぱらって訪問して泊まったり[太宰治*人間失格|1948]

[使用例] ぼくは東京へ帰ったら、土井旦那にさっそく連絡して、そこへいくように説得します。僕は、月下氷人、いや、はなさかじいさんのつもりです[田辺聖子*朝ごはんぬき?|1976]

[解説] 「仲人」の別名です。二つの伝説が合わさって生まれたことばです。
 ひとつは、月下老人の伝説です。ある青年が見合いのために寺に行くと、月の光の下で、老人が本を読んでいました。不審に思って尋ねると、老人は結婚を司る幽界の人だと言います。袋の中には、縁結びの赤い縄が入っていました。
 老人は、青年の結婚相手は別にいると告げます。それは三歳の少女でした。結局、青年は後に、成長したその相手と結婚します。これは「続幽怪録」という書物の中の「定婚店」という話です。
 もうひとつは、占い師の話です。ある人が氷の上に立ち、氷の下にいる人と話す夢を見ました。占い師に聞くと、「それはあなたが仲人を務めるという夢だ」と告げられました。そして結局、そのとおりになったということです。こちらは「晋書」に載っている話です。
 「月下老人」「氷人」が混同されて「月下氷人」となりました。「月」「氷」というきれいな語句を並べたくなる、無意識の心が働いたのかもしれません。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「月下氷人」の意味・わかりやすい解説

月下氷人
げっかひょうじん

月下の老人と氷上の人の意で、婚姻の媒酌人をいう。中国、唐の韋固(いご)という独身者が旅行中、宋(そう)城で、月下に赤い紐(ひも)の出た袋にもたれかかり読書する1人の老人に出会った。韋固がその赤紐の由来を問うと、老人は「縁結びの紐で、これで夫妻の足を結べば、どんな遠くの人でも、敵同士でも、夫婦になるのだ」と答え、韋固の未来の妻を予言した。14年後、韋固は郡主の娘と結婚したが、それは老人の予言どおりの娘であったと、『続幽怪録』が伝える。一方、晋(しん)代に索紞(さくたん)という名高い占い師があり、そのもとを狐策(こさく)が訪ね、「氷の上に立って氷の下の人と話をした」という夢占いを求めた。すると索紞は「氷の上下は陰陽であるから、それはあなたが結婚の媒酌をするという前兆だ」と判じた。のち狐策は大守の息子の仲人を勤めることとなったと、『晋書(しんじょ)』「芸術伝」は伝える。

[田所義行]

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