田辺聖子(読み)タナベセイコ

デジタル大辞泉 「田辺聖子」の意味・読み・例文・類語

たなべ‐せいこ【田辺聖子】

[1928~2019]小説家大阪の生まれ。「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」で芥川賞受賞。大阪弁を生かしたユーモア溢れるエッセーで知られる。他に「新源氏物語」「花衣ぬぐやまつわる…」「ひねくれ一茶」「道頓堀の雨に別れて以来なり」など。平成12年(2000)文化功労者。平成20年(2008)文化勲章受章。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「田辺聖子」の意味・わかりやすい解説

田辺聖子
たなべせいこ
(1928―2019)

小説家。大阪市生まれ。樟蔭(しょういん)女子専門学校(現、大阪樟蔭女子大学国文科卒業。明治・大正・昭和の三代をたくましく生き抜く大阪女を描いた『花狩(はなかり)』(1958)が懸賞小説に当選、ラジオドラマ作家としても活躍し、『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)』(1964)で第50回芥川(あくたがわ)賞受賞。1966年(昭和41)医師川野純夫(すみお)(1924―2002)と結婚自伝的小説の『私の大阪八景』(1965)、エッセイ『女の長風呂(ながぶろ)』(1973)、『千(ち)すじの黒髪――わが愛の与謝野晶子(よさのあきこ)』(1972)、長編『求婚旅行』上・中・下(1973~1974)、中年男女をユーモラスに描いた『すべってころんで』(1973)、『文車(ふぐるま)日記――私の古典散歩』(1974)、『古事記』を舞台に恋の悲劇を描いた『隼別(はやぶさわけ)王子の叛乱(はんらん)』(1977)、自伝『欲しがりません勝つまでは――私の終戦まで』(1977)、日本のシンデレラ物語『舞え舞え蝸牛(かたつぶり)――新落窪(おちくぼ)物語』(1977)、『新源氏物語』全5巻(1978~1979)、『中年ちゃらんぽらん』(1978)、『姥(うば)ざかり』(1981)、芥川賞受賞までを描いた自伝的長編『しんこ細工の猿や雉(きじ)』(1984)、『花衣(はなごろも)ぬぐやまつわる…――わが愛の杉田久女(ひさじょ)』(1987。女流文学賞)、『ひねくれ一茶(いっさ)』(1992。吉川英治文学賞)、『道頓堀(どうとんぼり)の雨に別れて以来なり――川柳(せんりゅう)作家・岸本水府(すいふ)とその時代』上・下(1998。泉鏡花文学賞読売文学賞)など、古典の小説化、伝記小説、歴史小説、現代小説、ハイミスものと旺盛(おうせい)な創作活動を展開。大阪ことばを駆使した、ユーモアと批評精神溢(あふ)れるストーリー・テラーであった。

 日本文芸大賞(1990)、菊池寛賞(1994)、紫綬褒章(しじゅほうしょう)(1995)を得、2000年(平成12)文化功労者、2008年文化勲章受章。

[橋詰静子]

『『田辺聖子長篇全集』全18巻(1981~1982・文芸春秋)』『『田辺聖子珠玉短篇集』全6巻(1993・角川書店)』『『ベスト・オブ・女の長風呂1 イブのおくれ毛』『ベスト・オブ・女の長風呂2 深夜のヒマ人』『ベスト・オブ・女の長風呂3 ああカモカのおっちゃん』(1995・文芸春秋)』『『姥ざかり花の旅笠――小田宅子の「東路日記」』(2001・集英社)』『『感傷旅行』(角川文庫)』『『花狩』『貞女の日記』『隼別王子の叛乱』『すべってころんで』『道頓堀の雨に別れて以来なり――川柳作家・岸本水府とその時代』上中下(中公文庫)』『『千すじの黒髪――わが愛の与謝野晶子』『求婚旅行』1~3『舞え舞え蝸牛――新落窪物語』『しんこ細工の猿や雉』(文春文庫)』『『中年ちゃらんぽらん』(講談社文庫)』『『文車日記――私の古典散歩』(新潮文庫)』『『私の大阪八景』(岩波現代文庫)』『『花衣ぬぐやまつわる…――わが愛の杉田久女』上下(集英社文庫)』『『ゆめはるか吉屋信子』上下(朝日文庫)』『荒木経惟著『わが愛と性――荒木経惟vs. 田辺聖子』(1982・創樹社)』『文芸春秋編・刊『女の華やぎ――田辺聖子の世界』(1986)』『浦西和彦著『田辺聖子書誌』(1995・和泉書院)』

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知恵蔵mini 「田辺聖子」の解説

田辺聖子

小説家。1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現大阪樟蔭女子大学)国文科を卒業した後、会社勤めの傍ら創作活動を始め、58年に『花狩』が懸賞小説に佳作入選しデビュー。64年に刊行された『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)』で芥川賞を受賞。その後、大阪弁で男女の機微を描く恋愛小説を次々と発表した。評伝小説でも活躍し、87年に俳人・杉田久女の評伝『花衣ぬぐやまつわる…… わが愛の杉田久女』で女流文学賞、93年に俳人・小林一茶が主人公の小説『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞、98年に川柳作家・岸本水府の評伝『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』で泉鏡花文学賞などを受賞した。『源氏物語』の口語訳など、古典文学の翻案にも力を注いだ。95年に紫綬褒章、2008年に文化勲章を受賞。19年6月6日、91歳で死去した。

(2019-6-13)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「田辺聖子」の解説

田辺聖子 たなべ-せいこ

1928- 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和3年3月27日生まれ。はじめ放送台本を手がける。昭和39年「感傷旅行(センチメンタル・ジヤーニイ)」で芥川賞。たくみな大阪弁で男女の機微をえがく。62年「花衣ぬぐやまつわる…」で女流文学賞,平成5年「ひねくれ一茶」で吉川英治文学賞,10年「道頓堀の雨に別れて以来なり」で泉鏡花文学賞,11年読売文学賞。12年文化功労者。19年朝日賞。20年文化勲章。大阪出身。樟蔭女子専門学校(現大坂樟蔭女子大)卒。

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367日誕生日大事典 「田辺聖子」の解説

田辺 聖子 (たなべ せいこ)

生年月日:1928年3月27日
昭和時代;平成時代の小説家

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