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朝鮮説話 ちょうせんせつわ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

朝鮮説話
ちょうせんせつわ

朝鮮の説話は,開国伝説として有名な檀君神話をはじめとする多くの始祖伝説から,虎や熊にまつわる民話にいたるまで,非常にバラエティに富んでいる。その一部は早くから漢文の表記に頼って文字に定着し,5~6世紀の歴史編纂期の原始説話や伝説は,『旧三国史』を基にした金富軾の『三国史記』や一然 (いちねん) の『三国遺事』に残っている。特に『三国遺事』は『三国史記』に採録されなかった古記の記録を原形どおりに収録しており,上代説話,伝説の宝庫である。ほかに仏教説話を集めたものとして覚訓 (生没年未詳) の編んだ『海東高僧伝』 (1215) が現在「流通」編2巻だけ伝わっている。また朴寅亮 (?~1096) の編著といわれる『殊異伝』は佚書となって 13編の説話が残っているにすぎないが,そのなかの,たとえば崔致遠の説話は,伝記というよりは中国の旧小説の一種である,不思議な出来事を短い文章に綴った志怪的色彩が強く,金時習の『金鰲 (きんごう) 新話』などの伝奇小説につながるものである。朝鮮では高麗初期に唐の科挙制度を採用して以来,経学と詩文が重んじられ,李朝に入るとますます道学が重んじられて道徳的文学観が確立した。しかし厳粛主義,現実主義的な生活のなかにあって,人々は息抜きとして説話を愛好し,「野談」が流行した。同時にこれらを筆記した閑話,雑記類がおびただしくつくられた。徐居正 (1420~88) の『筆苑雑記』『太平閑話』から洪万宗 (1643~1725) の『海東異蹟』『めい葉志諧』にいたるまで,その数は数十種を下らない。もちろんその内容は単なる説話集とはいえないが,多くの伝説,民話を含んでいる。一方,民衆の間では,口から口へと伝承されるうちに「語り物」あるいはパンソリに発展し,さらに小説に定着したものもある。李朝後期の代表的ハングル小説である『春香伝』『沈清伝 (しんせいでん) 』『興夫伝』『鼈主簿伝 (べっしゅぼでん) 』などがその例である。

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