木地(読み)キジ

デジタル大辞泉 「木地」の意味・読み・例文・類語

き‐じ〔‐ヂ〕【木地】

年輪木材繊維の粗密などによる、木材の地質木理もくり木目もくめ
漆などの塗料を塗る前の、白木のままの木材・指物さしもの器物
ろくろき、木彫りなどの細工をする材料の木を粗挽きしたもの。
木地塗り」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「木地」の意味・読み・例文・類語

き‐じ‥ヂ【木地・生地・素地】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] ( 木地 )
    1. 木材の地質。木理(もくり)木目
      1. [初出の実例]「新築の白っぽい木地(キヂ)には白熱瓦斯(ガス)のケバケバしい強い光りが照り反して居た」(出典:暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉一)
    2. 漆などの塗料を塗る前の地肌のままの木材、指物(さしもの)、塗器など。
      1. [初出の実例]「木地厨子一脚」(出典:東大寺続要録(1281‐1300頃))
      2. 「黄色い方の漆が半分程落ちて木地(キヂ)が全く出てゐる」(出典:坑夫(1908)〈夏目漱石〉)
    3. ろくろびきや木彫などの細工をする材料の木を荒く挽いたもの。未完成の細工物。
      1. [初出の実例]「白き物こそ黒く成けれ 木地にひくわんを其儘ぢさひして〈慶友〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一七)
    4. きじぬり(木地塗)」の略。
      1. [初出の実例]「木地(キヂ)のつづら笠にしろき紐(ひぼ)を上にむすばず」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)四)
  3. [ 二 ] ( 生地・素地。古くは「木地」とも書いた )
    1. 手を加えない自然のままの性質、状態。生まれつきの性質。もともとの性質、状態。素質
      1. [初出の実例]「朴は純朴ぞ。木地にかざらぬぞ」(出典:古活字本荘子抄(1620頃)一)
      2. 「ときどき生地(キヂ)のさびしいところが出ることがある」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉七)
    2. はじめの段階。基本。根底。
      1. [初出の実例]「それにしたつるものは木地から念の入て、骨ぐみたしかに教るにより」(出典:随筆・独寝(1724頃)上)
    3. 化粧をしていない顔。素顔
      1. [初出の実例]「木地(キヂ)にて堪忍のなり㒵にも、白粉ぬりくるは可惜(あたら)事なるに」(出典:浮世草子・好色敗毒散(1703)一)
    4. 織物の地質。染色あるいは仕立てるなど、加工を施していない状態にある時の織物。
    5. きじつち(生地土)
    6. 陶磁器の焼成をする過程で各工程の素材となるもの。焼上品に対する生素地や、上絵付品に対する白素地など。

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世界大百科事典(旧版)内の木地の言及

【木地屋】より

…木地は,(1)木の地質(木目),(2)細工物の粗形,(3)とくに指物・漆器などに漆その他の塗料を加飾しないものをいうが,このうち(3)を製作することを生業とした職人が,近世以来ひろく〈木地屋〉と呼ばれていた。それも大別すると,(a)指物などの板物細工に従った角物木地,(b)円形木器の挽物(ひきもの)細工に従った丸物木地,(c)杓子・檜物(曲物)など雑多な木地細工に従うものがあった。…

【滋賀[県]】より

…〈宇治は茶所,茶は政所〉とうたわれた愛知川上流の〈政所茶〉,日野町の製薬などの地場産業がある。愛知川上流の神崎郡永源寺町蛭谷と君ヶ畑は,日本全国の木地師のいわば聖地で,かつては木地の生産が盛んであったが,現在はまったく姿を消している。(3)湖北地方 県の北部で,長浜市を中心に坂田,東浅井,伊香,高島の諸郡を含む。…

※「木地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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