日本音楽の楽曲分類用語。尺八楽(がく)、胡弓(こきゅう)楽、琴(きん)楽で用いられる。一般にはその楽器のためにつくられた曲を意味するが、種目や流派により内容は多少異なる。胡弓、一絃琴(いちげんきん)では他の種目(箏曲(そうきょく)、三味線楽など)の曲の編曲や異種楽器との合奏曲を、本曲に対して外曲(がいきょく)とよぶ。尺八楽でも都山(とざん)流、上田(うえだ)流など、明暗(みょうあん)流以外は同様である。明暗流では「三虚霊(さんきょれい)」(普化(ふけ)尺八最古の三曲)のみを本曲として重視し、他を外曲とするが、吹奏形態はともに尺八のみによる。八雲琴(やくもごと)では神前演奏のための古雅な曲を本曲、家庭内での演奏用の曲を外曲とよぶ。ともに八雲琴のみによる独奏曲や連奏曲である。また、天台宗大原(おおはら)流声明(しょうみょう)の拍子の一つを本曲という。六拍子のことで、密教法要の九方便(くほうべん)はこの拍子によっても唱えられる。
[岩田道則]
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…幼年から尺八を好み,14歳で一閑流の横田五柳に師事し,主に外曲を学ぶ。のち尺八修練のため虚無僧となって托鉢中に豊田古童に出会い,師事して本曲を学び,豊田の没後,29歳で古童の名を継いだ。その後さらに琴古流の実力者(4世琴古のあと家元的存在)の久松風陽に師事し,琴古流本曲を学んだ。…
…しかし18世紀中ごろになると,虚無僧たちの尺八吹奏も音楽的な向上をみせはじめ,表向き禁止といいつつも一般人の尺八吹奏や箏・三味線との合奏もかなり広まった。そのころ江戸の虚無僧の中の尺八指南役だった初世黒沢琴古(きんこ)は,各地の虚無僧寺所伝の尺八曲を収集整理し,編曲して30曲余りの本曲を制定した。これを基に江戸を中心に琴古流と称する芸系(今日まで存続)が生じ,以後,関西その他の地方にもいくつかの流派が生じた。…
…本格的な手,本来の手の意味であるが,種目・時代によって異なる。三味線音楽の種目分類用語としては,伝承上の規範曲中の最古典たるものをいい,三味線の組歌全体をいうが,〈本曲〉ともいい,尺八や胡弓の〈本曲〉とほぼ同様な概念で用いられる。ただし,組歌の中を細分類して,その中でも最古典である《琉球組》以下の〈表七曲〉のみをとくに〈本手組〉といって,柳川検校作曲の〈破手組〉と区別することもある。…
※「本曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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