日本のチター型の2弦の撥弦(はつげん)楽器の総称。ただし,2弦はすべて同律に調弦されるので,複弦の一弦琴とみなすこともできる。八雲琴(やくもごと),竹琴(ちつきん),東流(あずまりゆう)二弦琴があり,大正琴(たいしようごと)もそれらの改良楽器である。二弦琴に1弦を加えて3弦としたものに,大和琴(やまとごと)または初瀬琴と称するものや,田村竹琴創案の竹琴などがあったが,伝承は絶えている。
八雲琴は,1820年(文政3)中山琴主(なかやまことぬし)(1803-80)が創案,出雲大社などに献奏する音楽に用いたので,当初は出雲琴(いずもごと)とも称し,美称として玉琴(たまごと)とも称したが,後にその処女作《八雲曲(やくもふり)》にちなんで八雲琴と改称した。形態は,一弦琴を模して作られたらしく,当初は太い竹を二つ割りにしたものを用いたが,後には杉または桐で作り,湾曲をつけ竹の節を彫刻する。箏と同様に裏板をつけ,2個の響孔がある。表板には,ポジション(壺)を示す徽(き)が31個あり,壺の名によって楽譜が記される。壺を左手中指にはめた白竹製の1寸8分(約5cm)ばかりの転管で押さえ,右手人差指にはめた鹿角製の1寸2分(約4cm)ばかりの竜爪で,両弦を同時に弾ずる。地歌・箏曲家の葛原勾当(くずはらこうとう)も同様な二弦琴を創案,竹琴と称したが,琴主創案のものがあることを知って,これに合流した。琴主の門下は,中国・四国地方から,近畿,江戸に及んだが,神道の宗教音楽的色彩が強くなる一方,大阪などでは地歌・箏曲家が扱って,明治期には明清楽とともに流行した。しかし,しだいに衰微して現在では大本教の典礼楽となっているほか,名古屋の椿神明社の奉仕楽となっている。また奈良の山本震琴(1903-88)が大阪系の伝承を伝えていた。
琴主の実弟の越智正常(大岸元琴)が江戸に普及させたなかから,歌舞伎囃子方の藤舎芦船が出て,端唄,俗曲などの伴奏にも適するように,一方で裏板をなくすなどの簡素化をはかるとともに,一方で音量の増大をはかって駒を大きくしたりして,歌舞伎の下座(げざ)楽器としても用いられるようにした。これによって八雲琴とは異なる楽曲を作り,明治期の東京の子女に普及させ,東流二弦琴と称して流行させた。芦船の名も,歌舞伎囃子方とは別に現在7世まで襲名されているが,愛好者は激減してしまった。
執筆者:平野 健次
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