二弦琴(読み)ニゲンキン

デジタル大辞泉 「二弦琴」の意味・読み・例文・類語

にげん‐きん【二弦琴/二×絃琴】

弦楽器一種で、細長い胴に同じ長さの2弦を張った琴。八雲琴やくもごとと、それを改良した東流あずまりゅう二弦琴がある。

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精選版 日本国語大辞典 「二弦琴」の意味・読み・例文・類語

にげん‐きん【二弦琴】

  1. 〘 名詞 〙 二弦を張った琴。二種ある。
  2. 文政三年(一八二〇中山琴主葛原勾当創始になる琴で、桐材に二弦を張る。長さ約一一〇センチメートル。記紀・万葉などの、古雅な歌謡をうたう曲の伴奏楽器八雲琴(やくもごと)
  3. 八雲琴から分かれた東流(あずまりゅう)二弦琴の略称。藤舎蘆船の創始。長唄曲調に近いが、長唄より落ち着いた音楽を奏する。
    1. 二弦琴<b>②</b>〈楊洲周延画〉
      二弦琴〈楊洲周延画〉
    2. [初出の実例]「新道の二弦琴の師匠の所の三毛(みけ)の様に」(出典吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「二弦琴」の意味・わかりやすい解説

二弦琴 (にげんきん)

日本のチター型の2弦の撥弦(はつげん)楽器の総称。ただし,2弦はすべて同律に調弦されるので,複弦の一弦琴とみなすこともできる。八雲琴(やくもごと),竹琴(ちつきん),東流(あずまりゆう)二弦琴があり,大正琴(たいしようごと)もそれらの改良楽器である。二弦琴に1弦を加えて3弦としたものに,大和琴(やまとごと)または初瀬琴と称するものや,田村竹琴創案の竹琴などがあったが,伝承は絶えている。

 八雲琴は,1820年(文政3)中山琴主(なかやまことぬし)(1803-80)が創案,出雲大社などに献奏する音楽に用いたので,当初は出雲琴(いずもごと)とも称し,美称として玉琴(たまごと)とも称したが,後にその処女作《八雲曲(やくもふり)》にちなんで八雲琴と改称した。形態は,一弦琴を模して作られたらしく,当初は太い竹を二つ割りにしたものを用いたが,後には杉または桐で作り,湾曲をつけ竹の節を彫刻する。と同様に裏板をつけ,2個の響孔がある。表板には,ポジション(壺)を示す徽(き)が31個あり,壺の名によって楽譜が記される。壺を左手中指にはめた白竹製の1寸8分(約5cm)ばかりの転管で押さえ,右手人差指にはめた鹿角製の1寸2分(約4cm)ばかりの竜爪で,両弦を同時に弾ずる。地歌・箏曲家の葛原勾当(くずはらこうとう)も同様な二弦琴を創案,竹琴と称したが,琴主創案のものがあることを知って,これに合流した。琴主の門下は,中国・四国地方から,近畿,江戸に及んだが,神道の宗教音楽的色彩が強くなる一方,大阪などでは地歌・箏曲家が扱って,明治期には明清楽とともに流行した。しかし,しだいに衰微して現在では大本教の典礼楽となっているほか,名古屋の椿神明社の奉仕楽となっている。また奈良の山本震琴(1903-88)が大阪系の伝承を伝えていた。

 琴主の実弟の越智正常(大岸元琴)が江戸に普及させたなかから,歌舞伎囃子方の藤舎芦船が出て,端唄,俗曲などの伴奏にも適するように,一方で裏板をなくすなどの簡素化をはかるとともに,一方で音量の増大をはかって駒を大きくしたりして,歌舞伎の下座(げざ)楽器としても用いられるようにした。これによって八雲琴とは異なる楽曲を作り,明治期の東京の子女に普及させ,東流二弦琴と称して流行させた。芦船の名も,歌舞伎囃子方とは別に現在7世まで襲名されているが,愛好者は激減してしまった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二弦琴」の意味・わかりやすい解説

二弦琴
にげんきん

日本の弦楽器。八雲琴とそれから派生した東流二弦琴とがある。八雲琴は「出雲琴」とも「玉琴」とも呼ばれ,中山琴主の創案と伝えられる。別に箏曲家葛原勾当も「竹琴」と名づけた二弦琴を創案した。歌舞伎囃子方の藤舎芦船は,八雲琴を改良して長唄三味線およびその囃子などとも合奏しうるようにした「東流二弦琴」を創案した。八雲琴も東流二弦琴も明治中期までは大いに流行したが,八雲琴が大本教の宗教楽として用いられているほかは,現在ではごく限られた演奏者を数えるのみとなっている。

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百科事典マイペディア 「二弦琴」の意味・わかりやすい解説

二弦琴【にげんきん】

日本の撥弦(はつげん)楽器。1.八雲琴(やくもごと)。木製の胴に2本の弦を張り,同音に調弦し,台にのせて演奏する。1820年(文政3年)中山琴主(ことぬし)が作製,これを普及したといわれ,祭祀の歌の伴奏などに用いられた。2.東(あずま)流二弦琴。八雲琴をやや大型に改造したもの。両者とも現在ではほとんど演奏されない。
→関連項目大正琴

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