村井吉兵衛(読み)むらいきちべえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「村井吉兵衛」の意味・わかりやすい解説

村井吉兵衛
むらいきちべえ
(1864―1926)

日本の紙巻きたばこ製造の先駆者的企業家。京都のたばこ商の次男に生まれる。幼くして同業叔父養子となる。21歳のころ入院先のアメリカ人医師から紙巻きたばこの製法を教えられた。1890年(明治23)輸入たばこを模した日本最初の両切り紙巻きたばこ「サンライス」を製造販売して好評を得た。その後アメリカ産葉たばこを原料に使って販売を伸ばし、村井兄弟商会を設立、機械による生産も開始した。99年にはアメリカ・タバコ社との折半出資で株式会社に改組、業界での優位を確実にしたが、1904年(明治37)の煙草(たばこ)専売法施行で会社を解散以後、銀行、鉱山業などに新たな活動分野を開いた。

[四宮俊之]

『大溪元千代著『たばこ王 村井吉兵衛』(1964・世界文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

20世紀日本人名事典 「村井吉兵衛」の解説

村井 吉兵衛
ムライ キチベエ

明治・大正期の実業家 村井商店創業者。



生年
文久4年1月22日(1864年)

没年
大正15(1926)年1月2日

出生地
京都府

経歴
9歳で叔父の煙草商・村井吉兵衛の養子となり、家督相続。外国煙草の製法を学び、明治23年日本初の両切り紙巻き煙草「サンライス」を製造発売し、村井兄弟商会を設立。翌年美人画のカードなどを入れて販売したところ、爆発的に売れ、一挙に洋式タバコが普及した。さらに「ヒーロー」「ヴァージン」などの新製品を出し、岩谷松平岩谷商店天狗煙草」と激しいシェア争いを展開、世間の注目を浴びた。37年煙草専売法実施を機に政府に売却し、東京に村井銀行を設立。鉱山、石油、製糖、製粉などの諸事業に関係し、京都財界でも活躍した。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「村井吉兵衛」の意味・わかりやすい解説

村井吉兵衛
むらいきちべえ

[生]元治1(1864).1. 京都
[没]1926.1.2. 東京
日本の近代たばこ産業の始祖。生家でたばこ,種油両替商を営むうち,外人宣教師から西洋式紙巻たばこの製法を学び,1890年国産初の両切紙巻たばこ「サンライズ」を製造,斬新な宣伝により成功した。 94年アメリカ産の葉を原料に「ヒーロー」を発売し,経営の基礎を固め,99年アメリカン・タバコ会社から資本を導入したが,1904年の煙草専売法施行によりたばこ民営は終り,銀行業に転じた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「村井吉兵衛」の解説

村井吉兵衛 むらい-きちべえ

1864-1926 明治-大正時代の実業家。
文久4年1月22日生まれ。明治23年村井兄弟商会をおこす。国産初の両切り紙巻きたばこ「サンライス」を製造・販売し,宣伝合戦で岩谷松平(いわや-まつへい)の「天狗煙草(てんぐたばこ)」に対抗。37年たばこの専売制移行により村井銀行を創立し,鉱山・石油業に進出した。大正15年1月2日死去。63歳。京都出身。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

367日誕生日大事典 「村井吉兵衛」の解説

村井 吉兵衛 (むらい きちべえ)

生年月日:1864年1月22日
明治時代;大正時代の実業家
1926年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の村井吉兵衛の言及

【タバコ(煙草)】より

…同じく東京の千葉商店がその翌年に〈牡丹印〉を世に出した。90年には京都の村井吉兵衛が日本最初の両切タバコ〈サンライス〉を発売し,村井兄弟商会の名を広めるとともに,渡米してタバコの製造法を学び,アメリカから輸入した葉タバコを使った新製品〈ヒーロー〉を94年に売り出した。この〈ヒーロー〉はその味が輸入タバコに似ており,景品付き販売やユニークな広告宣伝も功を奏し,タバコ民営時代の大ヒット銘柄となった。…

※「村井吉兵衛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

貨幣 (名目) 賃金額を消費者物価指数でデフレートしたもので,基準時に比較した賃金の購買力を計測するために用いられる。こうしたとらえ方は,名目賃金の上昇が物価の上昇によって実質的には減価させられている...

実質賃金の用語解説を読む