改訂新版 世界大百科事典 「東京瓦斯」の意味・わかりやすい解説
東京瓦斯[株] (とうきょうガス)
関東地区を中心に都市ガスを供給する公益事業会社。1885年東京府ガス事業の払下げを受け,渋沢栄一らが発起人となって資本金27万円の東京瓦斯会社(1893年株式会社に改組)として創立された。東京での都市ガス事業は1874年に東京会議所のガス灯事業として始められ,翌年東京府に移管されていた。当初の需要の主流は灯用であったが,1910年代に電灯が進出したこと,また23年の関東大震災でガス灯が減ったことなどから,同社は燃料用需要の開拓を進めた。このため需要家件数は38年に100万件を突破した。しかし第2次大戦中は物資統制が強化され,42年都市ガス使用は世帯人員による割当制となった。加えて,45年3月の東京大空襲で約60万の需要家が焼失したり,疎開などのため,需要家件数は1/3に激減した。
第2次大戦後,1945年に長野瓦斯,立川瓦斯など15のガス会社を合併して,供給区域は現在の東京,神奈川,埼玉,千葉,茨城,栃木,群馬,山梨,長野の1都8県に及ぶに至った(ただし,その全域が供給区域となっているわけではない)。またそれまで都市ガスの原料は石炭が中心であったが,50年代にまず重油(1952導入開始)へと転換が進み,その後原油(1957),LPG(1959),オフガス(1960),天然ガス(1962)がつぎつぎと導入され,原料の多様化が図られた。69年には東京電力と共同でアラスカからLNGを導入し,以後LNGを気化してそのままガス源にする天然ガス転換が進んでいる。一方,需要家数は1955年に100万件を突破して戦前の水準に復し,以来積極的な需要開拓が行われてきた。最近は大型ビルのガス冷暖房,ニュータウンのガスによる地域冷暖房,工場のボイラーの燃料としての用途(産業用LNG)において利用促進を図っている。コジェネレーション・システム(熱併給発電),燃料電池の開発にも意欲的に取り組んでいる。資本金1418億円(2005年9月),売上高1兆1908億円(2005年3月期)。
執筆者:田中 隆之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報