発起人(読み)ホッキニン

デジタル大辞泉 「発起人」の意味・読み・例文・類語

ほっき‐にん【発起人】

思いたって事を始める人。発起者。
株式会社設立企画して、定款署名した者。

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精選版 日本国語大辞典 「発起人」の意味・読み・例文・類語

ほっき‐にん【発起人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 思い立って事を始める人。初めに企てる人。発起者。
    1. [初出の実例]「発起人広蔵は是迠上海香港まで渡りたる者ゆゑ」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉八)
  3. 株式会社の設立を企画・準備して、定款に署名または記名捺印した者。
    1. [初出の実例]「日本鉄道会社発起人宮本頼三氏より同発起人諸氏に示したる役員給料之意見書を得たれば左に掲ぐ」(出典:朝野新聞‐明治一四年(1881)一一月二二日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「発起人」の意味・わかりやすい解説

発起人
ほっきにん

株式会社の設立の企画者として、定款に署名した者をいう。実質的な設立の企画者であっても、定款に発起人として署名しない限り、発起人ではない。発起人の資格については、なんらの制限も定められていない。よって、制限行為能力者でも、法人でもよい。発起人は設立の企画者として、少なくとも自ら1株以上の株式を引き受けることが義務づけられている。発起人のそのような株式引受けによって、設立中の会社という、法人格はないが、成立後の会社と同じ組織社団)が誕生する。この設立中の会社は、会社の成立に向けて、さらに実体形成(会社の組織を整える行為)をなし、設立登記によって、法人格を有する会社となるのである。この設立中の会社が、その会社組織を整えていく行為は、発起人によって行われる。設立段階で選任された取締役監査役はそのような発起人の設立手続を監督する。

 発起人はこのような職務を怠ると、会社に対して損害賠償責任を負う。もし、その職務懈怠(けたい)が悪意・重過失による場合は、それによって損害を受けた第三者に対しても、損害賠償責任を負う。会社不成立の場合にも、発起人には債権者や株式引受人に対する重い責任が認められている。すなわち、会社債権者には連帯責任を負い、株式引受人には出資金を全額返済することになる。

[永井和之]

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改訂新版 世界大百科事典 「発起人」の意味・わかりやすい解説

発起人 (ほっきにん)

株式会社の設立を発起し,定款に署名した者。定款に発起人として署名した者(商法166条)に限られ,実質的に会社の設立を企画し,設立事務を執行する者であると否とを問わない。なお法律上の発起人でなくても擬似発起人として責任を問われる場合もある(198条)。発起人の資格については別段の制限はなく,無能力者または法人でも差し支えない。発起人の数は1人以上であることを要し(165条),各発起人は1株以上の株式を引き受けなければならない(169条,175条2項9号)。発起人は通常発起人組合を組織し,また設立中の会社の執行機関として,定款の作成その他設立に必要ないっさいの行為を行う職務権限をもつ。会社成立と同時にこれら発起人の取得した権利義務は会社に帰属するが,会社不成立の場合には発起人に帰属することになる(194条)。会社成立の場合において任務を怠った発起人は会社に対し連帯して損害賠償の責めに任じ,悪意または重大な過失があるときは,第三者に対しても責めに任ずる(193条)。また会社に対して資本充実の責任も負う(192条)。発起人は,功労に対して特別利益が与えられることもあるが,発起人だけに許される現物出資(168条2項)とともに,不正を生ずるおそれがあるので,変態設立事項として厳重な規制に服する(168条1項4号,175条2項7号,184条,185条)。
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百科事典マイペディア 「発起人」の意味・わかりやすい解説

発起人【ほっきにん】

株式会社の設立を発起し,定款に発起人として署名した者。従来は7人以上必要とされたが,1990年の商法改正後は1人以上いればよく,各人は1株以上の株式の引受けを要する(会社法25条以下)。設立に関し任務を怠ったときは会社に対して,悪意または重大な過失あるときは第三者に対しても連帯して損害賠償責任を負う。定款に署名しなくても,発起人らしい外観を示した者(擬似発起人)も,同一の責任を負う。
→関連項目財産引受け特別背任罪変態設立募集設立発起設立

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「発起人」の意味・わかりやすい解説

発起人
ほっきにん
promoter; incorporator; subscriber

会社の設立を企画して定款をつくり,必要な事項を記載して署名または記名押印し,事実上その発起行為にあたる者(会社法26条1項)。株式会社の設立には 1人以上の発起人が必要であり,また各発起人は少なくとも 1株以上の設立時発行株式を引き受けなければならない(25条2項)。発起人となる資格について法律上の制限はなく,個人のほか法人もその定款に定めてある目的の範囲内で,他会社の発起人となることができる。(→発起設立

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世界大百科事典(旧版)内の発起人の言及

【株式会社】より

…そこで,株式会社の資本金を最低1000万円とする規制(168条ノ4)をおき,零細企業が株式会社形態をとることにより生ずる不合理の防止が図られているが,現在存在している100万以上の小規模株式会社を,法制度上いかに取り扱うべきかという問題の抜本的解決には至っていない。
[設立から消滅まで]
 (1)設立 設立方法には,発起人(1人でもよい)が設立の際に発行する株式の総数を引き受ける発起設立(170条)と,発起人以外の株主を設立の際に募集する(実際には,株主の公募が行われることはまれで,通常発起人の縁故者に申込みさせる)募集設立(174条)とがある。いずれも,まず発起人が定款を作成して公証人の認証を受ける(166,167条)。…

※「発起人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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