板焼き(読み)いたやき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「板焼き」の意味・わかりやすい解説

板焼き
いたやき

ガン、カモなどの水鳥の肉や、魚の白身杉板の上にのせて焼く料理。これに用いる板は杉板に限定されている。古くはへぎ焼きの名のほうが多く用いられ、1643年(寛永20)刊の『料理物語』では、へぎ焼きの名を使っている。材料を大きめに切り、調味液に浸し、杉板の上にのせ、炭火の上に移し、加熱して焼く。木板は熱の不良導体であるため、熱の伝導が弱く、ふんわりとした落ち着いた味になるのが特色で、材料はあまり強い熱源を必要としないものが向く。

 同様の調理法に杉焼きとよばれているものがある。康平(こうへい)年間(1058~65)の成立といわれる『新猿楽記』に、杉板の間に白身魚を挟んで両面から順次加熱したものをいうと記されている。1822年(文政5)刊の『料理早指南』には、杉板焼きと書き、杉板に厚く塩を塗り付け、その上にしょうゆに浸したイナダの身をのせて焼くとの解説がある。板焼き豆腐は、古くからある豆腐料理で、杉板の上に、辛味を少々きかせた蕗(ふき)みそを塗り、その上に、豆腐の水分半分くらい除いてのせ、さらにもう一枚の杉板に蕗みそを塗って上に置き、両面から順次加熱したのち、上の杉板を外し、包丁で適宜切り目を入れて用いる。

多田鉄之助

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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