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古紙 こし

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

古紙
こし

使用済みの紙および板紙。また、それらの裁断くず、および使用済みの紙器、紙袋、さらに古新聞・雑誌、書籍の返本などをも含めて総称することが多い。従来は「故紙」とも書いた。古紙は回収後、おもにパルプに再生され、紙の製造に供される。[御田昭雄]

再生技術と古紙の用途

古紙は水とともに湿式の離解装置中で離解(単繊維状態になるように分散させること)してパルプ状にし、従来は大きな夾雑物(きょうざつぶつ)を除いただけで下級板紙原料として用いられてきた。その後木材資源の不足から、より上質のパルプの再生に関心が集まり、微細夾雑物や軽量夾雑物の除去や、界面活性剤による印刷インキの分散除去や過酸化水素などによる漂白などの再生技術が進歩して古紙の用途は広がり、新聞用紙、更紙(ざらがみ)、中質紙などの印刷用紙、筆記用紙やティシュペーパーなどの原料として広く使われるようになった。[御田昭雄]

紙の消費と古紙の回収

紙の1人当りの年間消費量はその国の文化のバロメーターともいわれるが、2013年の世界のパルプ生産量は年間約1億7936万トン、紙・板紙の生産量は約4億0261万トンにのぼり、これを支えるため約6億立方メートル弱の木材チップを供給している(2012)。森林資源の伐採と、回収利用されずにごみとなる莫大(ばくだい)な紙くずは世界的な環境問題として各国は深刻に受け止めている。
 古紙の回収率はどのようにしても100%にはならないと考えられている。図書館に永久保存される書籍、燃やすことを前提としてつくられるたばこの巻紙や紙のお棺(かん)、さらにルーフィングペーパー(屋根葺(ふ)き用防水紙)や石膏(せっこう)ボード原紙のように建材になってしまうものなどは、もはや紙としては回収不能と考えられるため、古紙の回収率の極限は85%程度だといわれている。
 日本では、古紙の回収率と利用率の向上に官民をあげて取り組んだため、古紙回収率は1975年(昭和50)には38%であったのが、1984年には50%を超え、2001年(平成13)には60%、2005年には70%、さらに2014年にはついに80%を突破するに至った。2014年における、古紙の品種別の回収率でとくに高いのは、新聞古紙の149.4%と、段ボール古紙類の112.7%があげられる。これらの回収率が100%を超すのは、新聞古紙が工場出荷時に比べ水分を含むのと、折込広告がいっしょになって新聞古紙として回収され、その量が43~45%にも達するからであり、段ボール古紙類の場合は製品輸入における段ボール箱が含まれるからであると考えられるが、いずれにせよきわめて高い回収率を示している。
 世界各国は古紙の回収率を極限まで高めてごみの発生量を押さえるとともに、古紙からパルプを再生して木材パルプにかえて利用することにより、木材資源の節約、エネルギーの節約および節水を図ろうとしている。[御田昭雄]

各国の古紙回収

各国の古紙回収の傾向をみると、その国の社会と経済と文化が反映されているのがわかる。ここでは、アメリカ、ドイツ、日本の現状を解説するとともに今後の方向を考えたい。[御田昭雄]
アメリカ
アメリカはおもに自国の針葉樹を用い、2013年時点で年間7375万トンの紙・板紙と4941万トンのパルプを生産し、一方、7181万トンの紙・板紙を消費している。世界有数の紙パルプの生産国であり、また輸入国でもある。アメリカにおける古紙の回収量は4579万トン、回収率は63.8%となっている。アメリカでは国内消費した古紙の残りをカナダや東南アジアなどの開発途上国に輸出している。アメリカの古紙は針葉樹古紙であるため、好適な製紙原料として用いられている。カナダに輸出された古紙は再生パルプとして新聞用紙などの製造に利用され、かなりの部分はアメリカに再輸入されているといわれている。このことは、古紙をカナダに委託加工してもらい、新聞用紙の形で輸入して再利用しているともいえよう。[御田昭雄]
ドイツ
ドイツでは紙パルプ産業を支える豊富な森林資源はすでになくなっている。2013年時点で年間2239万トンの紙・板紙を生産し、1953万トンを消費しているが、パルプの輸入量が少ないため、繊維資源は足りない。そのため外国から輸入する機械およびその部品を包装してきた段ボールの古紙を回収し、さらに良質の古紙を輸入してパルプを再生し、紙を生産するといった、環境処理産業的色彩が濃い。ドイツはごみ減らしのため分別回収が進み、古紙の回収量は1536万トン、回収率は78.7%ときわめて高く、環境意識が強いことで世界的に注目を浴びてきた。
 しかしドイツでは、都市ごみを手作業で紙くず、プラスチック、液体容器、金属などに大別して回収しており、古紙は日本のようには小分けされず、また夾雑物の分離除去が十分でないので、ドイツ国内でも製紙原料としては使い勝手が悪いとして製紙業者からは好まれない。滞貨減らしの意味もあって、ドイツの古紙の相当数は東南アジアなどの市場に輸出されるが、これら市場では日本から輸出される紙原料としての古紙と競合し、苦戦していると伝えられる。今後ドイツにおいても、ごみ減らしから紙原料の回収へと、発想の転換が迫られるのではないかとみる人も多い。[御田昭雄]
日本
日本では和紙の歴史がきわめて古く、古紙を再生して使うことも当然のこととして行われてきた。正倉院の宝物として紙が保存されていることもよく知られている。にもかかわらず古代の紙が古文書などとして多く残っていないのは、和紙が古くから全国的に製造されていながら、量産技術がなかったためきわめて貴重なものとして扱われ、記録の必要がなくなった紙は、残しておかずに古紙として和紙に漉(す)きかえられたためだといわれている。
 日本は森林国でありながら木材の価格が高く、木材の最大の輸入国となっている。おもに広葉樹を用い2013年時点で877万トンのパルプと2624万トンの紙・板紙を製造し、世界で第7位のパルプの生産量と第3位の紙の生産量を誇っている。大量に消費された紙は当然ながら広葉樹古紙となる。日本では和紙の時代から古紙の回収率は高く、明治になって洋紙を生産消費するようになってもその傾向は変わらず、第二次世界大戦後の1970年代でさえも40%を超え、古紙はパルプに再生され、再生紙の製造に供されリサイクルされていた。
 しかし、1970年(昭和45)ごろから環境問題でさらに回収率の急速な向上が迫られ、2014年には回収量2175万トンで回収率80.8%を達成している(『古紙ハンドブック 2015』)。日本の広葉樹古紙から再生されるパルプは、アメリカの針葉樹古紙からの再生パルプに比べ繊維長が短く、諸強度が劣り、製紙原料としての評価は低かった。しかし日本の古紙は上白紙、中白紙、模造紙、色上紙、新聞、雑誌、段ボールなどに丁寧に仕分けされ、それぞれ違う価格で流通される仕組みとなっていたため、古紙の製紙原料としての使い勝手がよいとして、それなりの評価を受けてきた。従来の技術では、古紙の再生パルプの品質からいって上級の紙の製造に大量に配合できないため、古紙は輸出したり、紙以外の用途を探さざるをえない状態にあったが、再生技術の進歩により利用率は大幅に向上した。[御田昭雄]
『紙業タイムス社編・刊『古紙 街の資源』(1990) ▽紙業タイムス社編・刊『紙とエコロジー 環境対策・古紙リサイクル・エコ製品』(1996) ▽日本製紙連合会編・刊『古紙』(1999) ▽古紙再生促進センター編・刊『古紙再生促進センター会報』26巻5号(2000) ▽古紙再生促進センター編・刊『古紙ハンドブック 2000』(2001) ▽岡田英三郎著『紙はよみがえる――日本文化と紙のリサイクル』(2005・雄山閣) ▽紙業タイムス社編・刊『紙パルプ産業と環境2008 改めて古紙と再生紙を考える』(2008)』

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