日本大百科全書(ニッポニカ) 「機械パルプ」の意味・わかりやすい解説
機械パルプ
きかいぱるぷ
mechanical pulp
木材などの繊維原料を機械的に処理して製造するパルプの一種。略称MP。新聞用紙、更紙(ざらがみ)などの下級紙や繊維板などの原料となる。原料としては、古くは色が白く、繊維が長いエゾマツなどの針葉樹の丸太が好んで使用された。その後、原木の不足からシラカンバなどの広葉樹も用いられるようになり、さらにパルプ化技術の進歩により、かなり広範囲の針葉樹および広葉樹のチップまでが原料として用いられるようになった。
製法としては、木材を水と共存下で機械的に解繊する方法がとられるが、さらに大別して、(1)丸太を水にぬらしながら砕木機の回転する砥石(といし)面に押し当てて解繊する方法と、(2)木材チップを水とともにリファイナーで機械的に解繊する方法とがある。前者の方法で得られるパルプを砕木パルプground pulp(GP)、後者の方法で得られるパルプをリファイナーグラウンドパルプrefiner ground pulp(RGP)とよんでいる。機械パルプはパルプの製造に際して化学薬品を要せず、パルプの収率が約95%ときわめて高く、パルプ排水の濃度もきわめて小さい。しかし、その化学的組成は木材とほとんど変わらず、リグニン含有量もきわめて大きいため、大きなパルプ強度が望めず、また高白色度まで漂白することは困難であるので、上質紙原料としては使用できない。またパルプ製造用の電力も化学パルプに比べて極端に大きい。強度については、その後熱処理と機械処理を併用するサーモメカニカルパルプ(TMP)が開発され、向上が図られた。このサーモメカニカル法を除いては単独抄紙(しょうし)は不可能である。新聞用紙などの下級印刷用紙は機械パルプと新聞古紙の再生パルプを主原料として、これにつなぎ用のパルプとして化学パルプを配合して抄造される。
[御田昭雄 2016年4月18日]
『紙パルプ技術協会編・刊『メカニカルパルプ』(1997)』