板金加工(読み)ばんきんかこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「板金加工」の意味・わかりやすい解説

板金加工
ばんきんかこう

金属板を素材とし、これに工具を介して力を加えて変形させ、所定の形状寸法の製品をつくる作業のこと。プレス機械を用いて行う板金加工は一括して板金プレス加工とよばれる。プレス以外の機械によって行う板金加工に、ロール成形、スピニング、引張り曲げ加工、爆発成形、放電成形などがある。

 ロール成形は、細長い板を幅方向に曲げて、円管、形材、サッシ類などのように断面形が一様で長い製品をつくる方法の一つであり、2個1組の成形ロールを何組か並べて配置し、帯状の板材を先端から順次ロール組の間を通して少しずつ曲げて最終断面形に仕上げていく作業である。コイル状に巻いた素材を用いることによって、非常に長い製品を能率よくつくることができる。この方法で板を曲げ、つなぎ目を電気溶接してつくった円管は電縫管(でんぽうかん)とよばれ広い用途がある。

 スピニングspinningはへら絞りともいわれて、円板素材から回転対称形の容器をつくる作業であり、轆轤(ろくろ)台に粘土をのせて回転しながら壺(つぼ)を成形するのと同じ原理の作業である。ただし、スピニング機の回転軸は鉛直でなく、通常、水平である。そして製品容器の内面形状にあわせた成形型を用い、その端面に素材円板を取り付けていっしょに回転させ、円板の外面側からロールを圧(お)し付けて素材を一部分ずつ塑性変形させ、成形型になじませていくのである。ロールのかわりにへらを用いて成形することもあるので、へら絞りの名がある。深絞りではつくれないような形、たとえば水筒のように口がすぼまった容器の製造もこの方法で可能である。板金プレス加工およびロール成形加工は型工具費がかさむが作業速度は速いので、同一品の大量生産に向いている。

 容器類の多品種少量生産の場合で、メス・オス一対の型工具のどちらか一方のみですます方法は、スピニング以外にもいろいろとくふうされている。その一つである引張り曲げ加工は本質的には張出し加工と同様で、広くて長い板の両端をつかんで引っ張りながらオス型を板の面に圧し付けてその外形形状になじませる加工であり、大型で比較的浅い容器の製造に適している。鞍(くら)形曲面の成形もこの方法で可能である。メス型のみを用いた張出し成形法に爆発成形、水中放電成形がある。これらは水中での火薬の爆発、あるいは電極間での放電の際に、瞬間的に発生する大きなガス圧と膨張のエネルギーを水の運動に変えて、素材板面に圧力を及ぼしメス型になじませるのである。

 以上は成形加工であるが、このほかに接合を目的とした板金加工がある。はぜ折り継ぎは、トタン屋根を葺(ふ)くときにみられるように、薄板の端を折り曲げてかみ合せ接合する作業である。巻き締めまたはシーミングとよばれる加工は、たとえば缶詰缶の蓋(ふた)をする作業に応用されており、まず、プレスで缶の口を1ミリほど外側に直角に折り曲げておき、縁を丸めた蓋でこの折り曲げ部分を抱き込んで締め付ける作業で、スピニングの一種である。

[高橋裕男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例