地歌・箏曲の曲名。松本一翁作詞,三つ橋勾当作曲の手事物。大阪十二曲の一つともされ,また,《松竹梅》《名所土産(めいしよみやげ)》とともに,〈三役物〉という三味線手事の最高の曲とされる。正月の子(ね)の日に根のついた松を曳く行事にちなんで,初春の情景をさまざまに叙したもの。伊勢の神楽から歌い出し,最初の手事に伊勢の大神楽を暗示,次に摂津の田蓑島(たみののしま)の鶴を叙して,中の手事となり,そのあと箏組歌《菜蕗(ふき)》をもじって,最後の長い手事に入って,鶴の巣籠を表す〈巣籠地〉が合わされ,最後に正月の万歳から君が代を祝って終わる。箏の手は,大阪では峰崎勾当,京都では八重崎検校の手付といわれるが,流派,地域によって異同が多く,演奏者が即興的に手を付けることも多い。
執筆者:平野 健次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
※「根曳の松」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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