翻訳|suggestion
一般には他者によって与えられた言葉やジェスチャー,シンボルなどを,論理的根拠なしに無批判に受け入れることにより自らの考え,意見,態度,行動に変化が生じることをいう。多くの場合,暗示を受けた者はそのような変化を,他者によってもたらされたとか強制されたとかは思わず,なんとなく自然にそうなったと思う。そこには被暗示者の思慮分別や主体的,能動的な意志や意図が伴うわけではなく,したがって命令や模倣とは異なるものである。
暗示による反応は催眠状態において最も生じやすいが(催眠暗示),ふだんの覚醒状態においても生じる(覚醒暗示)。また他者によって与えられる暗示を〈他者暗示〉といい,自分で自らに与えるものを〈自己暗示〉という。野球選手が絶対に落ち着いて球を打てると自らに言いきかせてよい成績をあげたり,反対にだめだと思っていると実際にも打てないというのは,自己暗示の例である。さらに集団に対して与える暗示を〈集団暗示〉という。また催眠状態で与えて催眠からさめた後に反応を生じさせる暗示を〈後催眠暗示〉という。暗示による反応の生じやすさを〈被暗示性〉といい,それには個人差がある。被暗示性は,性格,性,年齢,知能などのほかにそのときの個人の心理状態,疲労度など,またその場の雰囲気,社会的状況などによって影響される。被暗示性は多かれ少なかれだれにもみられるものであるが,ヒステリー性格者や精神発達の未成熟な者は被暗示性が高いとされる。被暗示性と催眠へのかかりやすさとは必ずしも同一ではない。一般に暗示には暗示者の威光が関係しているが,とくに意図的に威光を利用する暗示を〈威光暗示〉という。暗示は一方では神経症や心身症その他の不適応状態の治療に心理療法の一つとして積極的に利用されており,それを〈暗示療法〉というが,他方ではコミュニケーションの一手段として,宣伝,教化,洗脳,群集心理の操作,政治,教育などにも利用されている。
→催眠
執筆者:児玉 憲典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ある人(暗示者)によって伝えられる感じや考え、信念あるいは指示などが、相手(被暗示者)によって、はっきりした論理的ないし客観的な根拠もなしに、無批判、無反省に受け入れられ、暗示者の伝えるとおりに感じたり、考えたり、信じたり、行動したりすること。自分自身が自分に暗示をかける場合があるが、これを自己暗示という。
暗示は、暗示者が被暗示者に対して、なにかの意味で大きな権威や威光をもっているときにおこりやすい。このような効果を計画的に利用する暗示を威光暗示という。その道の専門家、集団の指導者、多数者の一致した言動などは威光をもちやすい。また、危機的な場面や状況、群集の中に巻き込まれたような場合などは、暗示にかかりやすい。暗示に対するかかりやすさ(被暗示性)は、男性より女性、大人より子供、知能の高い者より低い者のほうが大きいとみられることもあるが、いろいろな条件によって左右されるから一概にはいえない。ある種のアルコール中毒、神経症傾向、統合失調症(精神分裂病)などでは、被暗示性の増大がみられる。また、他人の暗示に抵抗して、反対の反応をする対抗被暗示性を示す者もいる。
[辻 正三]
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