梓弓(読み)アズサユミ

  • ×梓弓
  • あずさゆみ あづさ‥
  • あずさゆみ〔あづさ〕

デジタル大辞泉の解説

[名]
梓の木で作った弓。
梓巫女(あずさみこ)が用いる小さな弓。
[枕]弓に関係のある、「引く」「張る」「射る」「反(かへ)る」「寄る」「音」「本(もと)」「末(すゑ)」などにかかる。
「―末は知らねど」〈・三一四九〉
「―はるかに見ゆる山の端(は)を」〈拾遺・雑下〉

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アズサとよばれる木でつくった丸木弓。アズサは木竹合成弓が考案される平安時代中期まで弓材として用いられ、『古事記』『万葉集』にその名がみられる。古くから枕詞(まくらことば)として使われ、弓の弦を引く、または張るところから「い」「いる」「ひく」「はる」、弓の部分名称から「もと」「すえ」「つる」、弓が反るところから「かえる」、矢を射る音から「や」「おと」などに冠せられる。

[入江康平]

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精選版 日本国語大辞典の解説

[1] 〘名〙
① アズサの木で作った丸木の弓。上代、狩猟、神事などに用いられた。「いる」の序詞としても用いられる。あずさの弓。あずさの真弓。
※古事記(712)中・歌謡「渡瀬に 立てる 阿豆佐由美(アヅサユミ)(まゆみ) い伐らむと 心は思へど〈略〉そこに思ひ出 愛(かな)しけく ここに思ひ出 い伐らずそ来る 阿豆佐由美(アヅサユミ)檀」
② あずさみこが、死霊や生霊を呼び寄せる時に鳴らす小さな弓。転じて、あずさみこをもいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
[2]
① 弓のつるを引く、または張るところから「い・いる・ひく・はる」にかかる。
※万葉(8C後)二・九八「梓弓(あづさゆみ)引かばまにまに依らめども後の心を知りかてぬかも」
② 弓の各部の名称から「もと・すゑ・つる」にかかる。
※万葉(8C後)一四・三四九〇「安都佐由美(アヅサユミ)末は寄り寝む現在(まさか)こそ人目を多み汝を端に置けれ」
③ 弓を引けば、弓の本と末とが寄るところから「よる」にかかる。
※万葉(8C後)一四・三四八九「安豆左由美(アヅサユミ)欲良(よら)の山辺の繁かくに妹ろを立ててさ寝処(ねど)払ふも」
④ 弓が反るところから「かへる」にかかる。
※二度本金葉(1124‐25)恋下「あづさ弓かへるあしたの思ひには引きくらぶべきことのなきかな〈藤原顕輔〉」
⑤ 矢を射ると、音が出るところから「や・音」などにかかる。
※万葉(8C後)二・二〇七「玉梓(たまづさ)の 使の言へば 梓弓(あづさゆみ)(おと)に聞きて 言はむ術(すべ) 為むすべ知らに」

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世界大百科事典内の梓弓の言及

【アズサ(梓)】より

…い,いる,ひく,はる,もと,すえ,つる,よる,かえる,や,音などにかかる枕詞として歌に詠まれた梓弓の梓にあたる植物には,古来キササゲ,アカメガシワ,オノオレ,リンボク(ヒイラギガシ)などの諸説があり一定しなかった。ところが白井光太郎がカバノキ科のヨグソミネバリ(ミズメ)説を唱え,正倉院の梓弓についての顕微鏡的調査の結果からも実証され,現在これが定説になっている。…

【梓巫女】より

…関東地方から東北地方にかけて分布する巫女の名称。梓弓は古代より霊を招くために使われた巫具で,これを用いてカミオロシ,ホトケオロシをすることから梓巫女の名がおこった。能の《葵上》には照日と呼ばれる巫女が梓弓の弦をはじいて口寄せする謡がある。…

【キササゲ】より

…果実を利尿剤とし,材は軽いので下駄,器具,版木にする。昔は弓を作り,梓弓(あずさゆみ)と称した。若葉は食用になる。…

【弓】より

…実例としてしばしば挙げられてきたのは,アフリカ,南アメリカなどのものであるが,他の地域にも散在する。ヨーロッパでも一部で用いられたし,日本の梓巫女(あずさみこ)が用いる梓弓も楽弓の一種といえる。ただし,楽弓がほんとうに飛道具の転用に発したのか,逆に楽器が先立ったか,両者別源で形が似たのか,説が分かれている。…

※「梓弓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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