アズサ(読み)あずさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アズサ」の意味・わかりやすい解説

アズサ
あずさ / 梓

アズサとよばれる植物については古くからいろいろな説がある。貝原益軒はノウゼンカズラ科のキササゲにあて、小野蘭山(らんざん)は『本草綱目啓蒙(けいもう)』のなかでトウダイグサ科のアカメガシワとしている。しかし植物学者白井光太郎は、カバノキ科ヨグソミネバリであるとし、梓弓(あずさゆみ)の産地であった山梨、長野両県には多くの自生があること、また、アズサという方言もあり、材料としても適当であるなど根拠を示した。

小林義雄

 なお、縄文時代の鳥浜(とりはま)遺跡(福井県)から出土した弓は、材が判明したものの大半がカシでつくられており、ヨグソミネバリのものはない。しかし『万葉集』には梓弓を詠んだ歌が33首もあり、正倉院にもヨグソミネバリの弓が残されている。

[湯浅浩史]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アズサ」の意味・わかりやすい解説

アズサ(梓)
アズサ
Betula grossa

カバノキ科の落葉高木でミズメ,ヨグソミネバリなどとも呼ばれる。各地山地に生じる。枝は紫褐色で光沢があり,皮目が散在する。皮をはぐとサリチル酸メチル (サロメチール) の臭気がある。この特徴はカバノキ属 Betula全体に多少とも知られるが本種では特に強い。葉は先のとがった卵形で長さ6~10cmあり,縁に細かい鋸歯がある。材は堅く,緻密なため工芸材や装飾材に用いる。

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