1964年(昭和39)制定の林業基本法を改正、名称変更して2001年(平成13)に制定された法律(昭和39年法律第161号)。本改正は林政の基本的な考え方を、従来の木材生産を主体としたものから森林の有する多面的な機能の持続的発揮を図ることを目的としたものへとする、政策の転換に伴うものである。ここでいう「森林の有する多面的な機能」とは、「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能」(2条)のことである。このように、多面的な機能のなかには旧法が目ざした「林産物の供給等」、すなわち林業の安定的な供給も含まれており、本法でも「林業の持続的かつ健全な発展」(3条)が規定されている。しかし政策理念としてではなく現実的な施策の推移をたどれば、「木材生産主体=森林の経済的機能重視」から国土保全、水資源涵養(かんよう)、自然環境の保全等の公益的な機能の重視へと転換されてきていることは否めない。たとえば、1980年代中葉に目ざされた「21世紀国産材時代の実現」は著しい木材自給率の低下(旧法制定の1964年73%→本法制定の2001年18%、2007年現在23%)がみられるのみならず、「森林・林業基本計画」(11条)では旧法で掲げられていた自給率向上の数値目標が削除されるなど、「国産材時代の実現」はきわめて困難になってきている。
その他の主要条項を列挙すれば、(1)国、地方公共団体、森林所有者等の責務(4条~9条)、(2)森林および林業の動向に関する年次報告等(「森林・林業白書」。10条)、(3)都市と山村の交流等(17条)、(4)効率的かつ安定的な林業経営を育成し、これらの林業経営が林業生産の相当部分を担う林業構造(望ましい林業構造)の確立(19条)などである。また、林産物の輸入に関する措置(26条)が新たに定められ、「林産物の輸入によつてこれと競争関係にある林産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする」とされている。しかし、実際はシイタケの輸入に対して発動されたことがあるだけで、国産材生産に「重大な支障」がもたらされているにもかかわらず、輸入制限に関する措置はなんら講じられていない状況である。
[野口俊邦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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