日本大百科全書(ニッポニカ) 「森長英三郎」の意味・わかりやすい解説
森長英三郎
もりながえいざぶろう
(1906―1983)
弁護士。徳島県生まれ。農業学校を出て上京。明治学院、日本大学に一時在籍したが、その後浅草・山谷(さんや)方面で最底辺の放浪生活を送り、その間マルクス主義に触れ、歌舞伎(かぶき)など雑学を学んだ。1936年(昭和11)弁護士となり布施辰治(ふせたつじ)の指導を受けて活動を開始。戦時中、スパイ査問事件で治安維持法違反などに問われた宮本顕治の弁護を務めた。戦後は再建された自由法曹団に参加、多くの労働事件を手がけたほか、三島由紀夫の小説『宴(うたげ)のあと』によるプライバシー侵害事件、大逆事件の再審請求、丸正(まるしょう)事件の弁護などに携わった。また、戦前の裁判史に取り組み、『史談裁判』(1966~75)、『裁判自由民権時代』(1979)、『山崎今朝弥(けさや)』(1971)、『禄亭(ろくてい)大石誠之助』(1977)などを著した。
[北河賢三]