楡の木陰の欲望(読み)ニレノコカゲノヨクボウ(その他表記)Desire Under the Elms

日本大百科全書(ニッポニカ) 「楡の木陰の欲望」の意味・わかりやすい解説

楡の木陰の欲望
にれのこかげのよくぼう
Desire Under the Elms

アメリカ劇作家オニールの三部12場からなる戯曲。1924年初演。1850年ごろのニュー・イングランドの農場を舞台に、厳格なピューリタンである老父キャボットと反抗的な息子エベンとの土地相続をめぐる確執縦糸に、エベンと若い継母アビーの禁断の愛を横糸に、物欲と愛に引き裂かれる人間像を悲劇的にうたい上げた意欲作である。初演当時、近親相姦(そうかん)、嬰児(えいじ)殺しといった内容のため、各地で批判や上演禁止騒ぎを起こし話題となったが、地方色豊かな方言の使用、ギリシア劇の骨格やフロイト心理学の援用、写実的でかつ象徴的な舞台設定など、劇作家オニールの才能が全面的に開花した傑作とされている。

[一ノ瀬和夫]

『『楡の木陰の欲望』(清野暢一郎訳・角川文庫/井上宗次訳・岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「楡の木陰の欲望」の意味・わかりやすい解説

楡の木陰の欲望
にれのこかげのよくぼう
Desire under the Elms

アメリカの劇作家 E.オニールの戯曲。3部 12場。 1924年 11月 11日ニューヨークで初演。 1850年代のニューイングランドを背景に,ピューリタニズム風土における人間の孤独と欲求不満を自然主義的手法で描いた作品幼児殺しや親子の不倫な関係が扱われているため,発表当時は上演禁止などで話題を呼んだ。

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