(読み)かく

精選版 日本国語大辞典 「槨」の意味・読み・例文・類語

かく クヮク【槨】

〘名〙 死体を納めた棺を置く区画粘土槨木炭槨
菅家文草(900頃)二・傷巨三郎、寄北堂諸好事「伊洛有笙追逝水、孔家無槨断庭」 〔論語‐先進〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「槨」の意味・読み・例文・類語

かく〔クワク〕【×槨】

墓室内部の棺を保護するもの。木槨石槨粘土槨・礫槨れきかく木炭槨などがある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「槨」の意味・わかりやすい解説


かく

古墳の埋葬施設。本来遺骸(いがい)を納める棺が直接土に触れぬように棺の周りを囲む木の外箱をさす。中国では棺と槨が共存したことが明らかであるが、『三国志』魏書東夷伝倭人(ぎしょとういでんわじん)条には、「其死有棺無槨」と中国風の槨がわが国の墓制にないことを記している。この槨と棺の字義については、1914年(大正3)から16年にかけて喜田貞吉(きたさだきち)と高橋健自(けんじ)の間で論争があったが、日本では、粘土槨、木炭槨、礫(れき)槨などのように、古墳の埋葬施設で木棺をくるむ部分をさす語として使われている。

[久保哲三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「槨」の意味・わかりやすい解説


かく

墓制上の用語。中国古代用法では,直接死体を収納するものを棺といい,その棺を置くところを槨といい,槨は壙の中に造られるという。厳密にいえば日本の古代の墓制にはあてはまらない。大正初期に棺槨論争があったが,現在は棺は用いるが,槨という用語はあまり使われていない。粘土槨,木炭槨という言葉は本来の厳密な意味からは離れており,木棺を粘土あるいは木炭などで包むような構造のものをいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【石室】より

…石で作った室を意味するが,おもに埋葬施設をさすときに用いる。その場合,原則的には,遺体を直接入れる容器を〈棺〉,棺を収めるもので,単次葬用に作られ,大きさも棺によって規定されるものを〈槨(かく)〉,そして,棺とは直接関係しない広い空間と通路をもち,複数の棺(遺体)を順次追葬(複次葬)することのできるものを〈室〉と呼びわけるべきであるが,3者を厳密に区別することは困難な場合が少なくない。したがって,これらの用語は混用されることが多く,石室は火葬墓の蔵骨器や経塚の経筒を収納する石組みなどを呼ぶのにも用いられる。…

【墳墓】より

…石,塼(せん),木などで構築した墓室内に棺を納めることも多い(石室塼室墓)。墓室の中にあって棺を包みもつ構造を槨(かく)という。日本考古学では室と呼ぶべきところを槨と呼ぶ人もある。…

【木槨墓】より

…棺をおさめる外箱を槨(椁)といい,木槨墓は中国古来の重要な葬制であった。新石器時代後期に山東地方で発達する大汶口(だいぶんこう)文化に出現している。…

※「槨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android