古墳の封土中に,石室の被覆を設けずに,直接に木棺を埋める場合に,木棺の周囲を粘土で厚く包みこむことがある。棺の外部構造という意味で,これを粘土槨という。粘土槨において,棺身の底部から側方を包む粘土と,蓋をおおう粘土とは,多少の時間をおいて施工することになるから,必ずしも一貫した外形を示さぬことが多い。木棺の表面に赤色顔料の塗布があった場合には,粘土槨の内面にそれが残るほか,粘土槨の上面にも赤色顔料を塗ることがある。
棺身は粘土で包むが,棺蓋をおおう粘土を省略したものは,これを粘土床(ねんどしよう)と呼んで区別する。木棺の被覆として竪穴式石室を構築する場合には,石室の基礎工事として粘土を敷き,木棺を置いてその4側を粘土で固めて粘土床とする。木棺が割竹形である場合には,粘土床の上面が断面U字形のくぼみとなるので,かつてはこれを舟形の構造物を粘土でつくったものと誤認した人があった。
→木棺
執筆者:小林 行雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
古墳の墳丘上に長方形の土壙(どこう)を掘り,棺床(かんしょう)として粘土や木炭を敷き,割竹形木棺や組合せ式木棺をおいて,全体を粘土でおおって保護した埋葬施設。粘土棺床のみで被覆粘土をともなわない場合も含まれる。階層の違いにより竪穴(たてあな)式石室のかわりに営まれたもので,古墳前・中期に盛んに造られ,地域によっては後期までみられる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
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