新聞用紙(読み)しんぶんようし(その他表記)newsprint paper

改訂新版 世界大百科事典 「新聞用紙」の意味・わかりやすい解説

新聞用紙 (しんぶんようし)
newsprint paper

新聞印刷に用いられる紙の総称。筒に巻き取られているので,通常,新聞巻取紙と呼んでいる。インキ吸収性が高く高速輪転印刷に適することと,値段が安いことから,機械パルプを用いてつくられるが,最近では古紙を40%も混入するようになった。また世界的に軽量化が進み,日本では,以前の規格では新聞用紙1m2当り52±2gであったが,現在48g/m2主流となり,一部には46g/m2のものもある。寸法JISで規定されており,幅1626mmのA巻から幅546mmのE巻まで5種類あり,外径は910mm以下となっている。長さはいずれも6830m弱あり,A巻のもの1本から普通の4ページ組の新聞が2万5000枚とれる。印刷・筆記用紙パルプ以外にサイズ剤や塡(てん)料を含むが,新聞用紙はパルプだけからできているのが特徴である。諸外国の新聞巻取紙は印刷中に100本につき2~3回の断紙を生ずるのに対し,日本では1000本につき1~2回という高品質のものが要求されている。

 日本での新聞用紙の生産開始は1875年12月といわれているが,砕木パルプを製造しはじめたのが90年であるから,初期には輸入パルプや木綿ぼろのパルプを用いて製造したものと推定される。日清戦争(1894-95)の勃発とともに新聞の発行部数が急増して,用紙の生産量も増加の一途をたどった。第2次大戦後一時的に生産量は減少したが,経済復興とともに新聞用紙の需要も増加し,近年では年間約300万t,1人当り20kg以上の消費をしており,板紙を除いた紙の約20%を占めている。原料の砕木パルプは軽度の脱色処理しか施されていないので,新聞用紙は木材と同様に,日光にさらすと時間がたつにつれて茶褐色に変色する。資源保護の気運も加わって日本では生産した新聞用紙の大部分回収・再利用されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新聞用紙」の意味・わかりやすい解説

新聞用紙
しんぶんようし
news printing paper

安価でかつ新聞の印刷に適した性質をもつように抄造した紙。印刷用紙としてはほぼ更紙(ざらがみ)(印刷用紙D)程度の紙であるが、その用途がやや特殊であるため、次に示すような代表的諸性質を兼ね備えていることが望まれている。

(1)長期保存に耐えなくてもよいが安価に供給されること。

(2)両面印刷に耐えうるように不透明であり、表裏差が少なく、夾雑(きょうざつ)物をもたず、かつ、できるだけ白いこと。

(3)連続高速印刷に向くよう巻取紙であり、引張り強さ、引裂き強さなどの諸強度があり、インキの吸収が早く、表面が平滑であること。

(4)新聞の配達が容易なように軽量化(坪(つぼ)量が小さいこと)されていること。

 新聞用紙はほかの印刷紙のように原料パルプの配合に関しての規定はないが、以上の諸性質を保持するため、結果的には更紙とほぼ同様の原料の配合からなり、外観も類似している。従来は機械パルプ(砕木パルプ)を主に、これにつなぎ用パルプとして化学パルプを少量配合して抄造してきたが、近年では原木不足のため機械パルプの代替に新聞古紙などを脱墨再生したパルプが利用されるようになり、年々その配合割合が増えている。また新聞紙の軽量化を進めるために、薄くても不透明で強度が大きい紙の抄造に適した原料機械パルプとして、サーモメカニカルパルプthermomechanical pulpが砕木パルプに置き換えられつつあるが、同パルプを使用すると新聞用紙製造の際のエネルギー消費量が増加するなどの問題もあり、このように新聞用紙の製造には種々の資源エネルギー対策が求められている。

[御田昭雄 2016年4月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新聞用紙」の意味・わかりやすい解説

新聞用紙
しんぶんようし
newsprint paper

新聞を印刷するためにつくられる用紙で,週刊誌などの刊行物にも用いられる。高速輪転機による印刷作業に耐えられるように,質が均等で引張りに対する強さが強いこと,平滑で表裏の相違がないこと,印刷インキの吸収状況がよいこと,などが主要な特質であり,近時はオフセットの印刷適性を付加したものが多い。色は白。輪転機に装着できるよう巻取り紙の体裁になっている。化学パルプ,ケミグラウンドパルプ,サーモメカニカルパルプを混合して原料とする。紙の厚さは 0.1mm以下,坪量は日本工業規格 JISで 52±2 g/m2 であるが,新聞用紙の呼称は,52 g/m2 を重要紙,49 g/m2 を普通紙,46 g/m2 を軽量紙と統一している。また省資源の立場から軽量化が進み,近年は超軽量紙として 43 g/m2 のものが利用されている。

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百科事典マイペディア 「新聞用紙」の意味・わかりやすい解説

新聞用紙【しんぶんようし】

新聞印刷に用いられる紙。砕木パルプを主原料とし,化学パルプを配合して作られるが,古紙が混入され,巻取りに仕上げる。高速度の輪転機にかけて印刷するので,適当な強度をもち,紙切れの少ないことが重要。
→関連項目印刷用紙

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化学辞典 第2版 「新聞用紙」の解説

新聞用紙
シンブンヨウシ
newsprint

砕木パルプやサーモメカニカルパルプ(TMP)などの高収率パルプを主体とし,これに古紙パルプおよび紙の強度を増すために化学パルプセミケミカルパルプを配合してつくる.高速輪転印刷のため,巻きとりの形で使用されるので,強度と印刷適性が要求される.世界的に軽量化が顕著である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の新聞用紙の言及

【印刷用紙】より

…おおよその定義としては,一般の印刷会社で印刷され,印刷物として見たり読んだりすることが主要目的である紙を印刷用紙という。したがって,新聞用紙は一般の印刷会社で印刷するものではないので,印刷用紙の分類から外れる。印刷用紙には塗工紙(コーテッド紙)と非塗工紙とがある。…

【紙】より

…これらの分類は細かに規定すれば数え切れないほどになるが,日本では通産省の紙パルプ統計による分類が一般に用いられている(表1参照)。
[新聞巻取紙]
 新聞用紙として使用する紙で,使用期間が短いこと,低価格が要求されることのために,機械パルプが用いられ,少量(約23%)の化学パルプを加えて高速輪転機に耐えうる強度に補強している。最近では新聞巻取紙に脱インキ古紙が多量に用いられるようになり,その割合も40%に達している。…

※「新聞用紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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