アメリカの劇作家テネシー・ウィリアムズの三幕戯曲。作者の代表的傑作で、1947年初演。南部の没落農園の娘ブランチは、少女時代に恋愛結婚に破れてから、滅びゆく過去の伝統的教養に執着しながらも、一方では欲情を抑えきれずに身を持ち崩し、いまは現実逃避の夢のなかに生きる孤独な女性。劇は、彼女がニュー・オーリンズの場末に所帯をもつ妹を頼って訪れ、その家に寄食、粗野で現実的な義弟によって真実を暴かれ肉体を犯され、ついに精神に異常をきたして精神科病院に収容されるまでの物語を11場面で構成、彼女の精神崩壊の過程を叙情的に、かつ冷酷に追求して強烈な迫力を生み出している。題名はニュー・オーリンズに実在した「欲望街」線の路面電車のことで、ブランチはこれに乗り、「墓場」線に乗り換え、「極楽」で下車して妹の家にたどり着くという設定で、人間の運命を象徴させている。
[鳴海四郎]
『田島博訳『欲望という名の電車』(新潮文庫)』
アメリカの劇作家T.ウィリアムズの代表作。1947年初演。没落した南部の農園出身のブランチが,ニューオーリンズに住む妹を頼ってくるが,粗野な妹の夫スタンリーに過去の秘密を暴露されたうえ,手込めにされて精神に異常をきたす悲劇。ブランチの退廃美を抒情的に描きつつ,その分裂した心理を残酷なまでにえぐり,強烈な南部のにおいを舞台に色濃く漂わせる。1951年映画化(E. カザン監督,ビビアン・リー主演)。日本では文学座で杉村春子のブランチで紹介され,彼女の当り役となった。
執筆者:西田 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…陸軍士官学校から放校処分を受けたのち,ニューヨークの〈ドラマティック・ワークショップ〉に学び,女優であり演出家であったステラ・アドラーからスタニスラフスキーの演技論と技術を学ぶ。1944年,《ママの想い出》でブロードウェーにデビューし,47年エリア・カザンElia Kazan(1909‐ )演出の《欲望という名の電車》(1951年に同監督により映画化)で一躍スターとなり,〈スタニスラフスキー・メソッド〉とよばれる演技スタイルが流行するきっかけをつくり,〈アクターズ・スチュディオ〉のメンバーとなった。フレッド・ジンネマン監督《男たち》(1950)で映画にデビューし,《欲望という名の電車》,《革命児サパタ》(1952),《ジュリアス・シーザー》(1953)と3年つづけてアカデミー主演男優賞にノミネートされ,4年目の《波止場》(1954)でオスカーとニューヨーク映画批評家賞を受賞,〈メソッド・アクター〉としては最初の映画スターとなった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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