江戸時代、領主が漁村から船の乗組員として徴発した夫役(ぶやく)の一種。加子役、舸子役とも書く。中世からみられたが、江戸初期に米納または金納に転化した所が多い。また地域によっては小物成(こものなり)の一部に含まれた所もある。水主役高は棟別(むねべつ)あるいは水主人数を基準に決定された。領主に水主役を負担することによって、漁民は地先漁場の占有権を獲得した。豊臣(とよとみ)秀吉は朝鮮出兵に際して全国的規模で水主を徴発し、水軍に加えた。瀬戸内海の讃(さん)州塩飽(しわく)島では、朝鮮出兵に際して水主650人、船32艘(そう)が今治(いまばり)城主福島正則(まさのり)の支配下に割り当てられた。その後、塩飽島は幕府の直轄領となり、役加子数44人、船数443艘で幕府の御用水主浦となった。
[川鍋定男]
加子役とも。浦に賦課された夫役(ぶやく)の一種。本来は領主の軍事的必要に応じて徴発された海上の陣夫役で,戦国期から近世初めにかけて顕著にみられた。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に全国的規模で徴発された。その後,軍事のみでなく領主の御用・廻米などにも動員されたが,廻船業の発達にともない,多くは代金納化された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…海高は徳川氏の関東入部以後の設定になり,漁業権の確立を内包する近世漁村の成立過程で誕生した。漁業権の確立はまた,戦時の兵員・米輸送,領主御用など渡海渡川時に徴用される水主(水手)役(かこやく)の負担の有無と関係が深い。水主役が本年貢に結びつけられ,夫役人徴発を根底にもつ軍役調達への即応形態として置かれたものであることを考えると,海高もそれにつながると思われる。…
…一般には梶取,船頭などの上級船員に対して,その配下の下級船員を指すことが多いが,古くは船員の総称として用いられることもあった。〈水主〉とも書く。律令制下で国家貢納物の輸送には,海人・漁民などを徭役あるいは雇用して水手とした。しかし梶取と異なって,特別の技術を要しない単純労働であるから,梶取に比すれば代償は少なかった。荘園年貢の輸送には臨海荘園の場合,一般領民が夫役として水手になることが多く,また備中国新見荘のような内陸荘園では,領民に水手役として米などを代納させ,それをもって港湾で水手を雇うのが例であった。…
…村高に結び郷帳に定納が銘記されている小物成(こものなり),あるいは村高に結ばないが郷帳外書に記される(不記入の場合もある)浮役の一種。前者はほとんど山野河海から揚がる収益,後者は魚など収獲浮遊物に対して賦課された貢租で,大きくは夫役的色彩をもつ水主役(かこやく)と農村の田畑貢租に相当する浦役とに分けることができる。これは幕藩制成立期に村方(地方(じかた))との分離によって成立,確定した近世漁村(浦方,および主漁従農の半農半漁村=端浦(はうら))の,地先漁業における封建的漁業権の対価となるものである。…
※「水主役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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