改訂新版 世界大百科事典 「水産工芸品」の意味・わかりやすい解説
水産工芸品 (すいさんこうげいひん)
水産物を原料とする工芸品。種類は多岐にわたるが,工芸品とはいえない玩具程度のものから高度な芸術的価値のあるものまで千差万別である。おもなものを表に示す。貝細工にはヤコウガイ,アワビ,ホラガイ,ホタテガイ,ハマグリなどの貝殻が材料に用いられる。ボタン製造など比較的機械化されているものもあるが,手工業的製品が多い。近年はみやげ物用の貝細工が大量に製造され輸出もされている。天然真珠はアコヤガイ,アワビ,カラスガイなどに,まれではあるが自然にできるもので,昔から装飾品として珍重されてきた。アコヤガイに人工的に真珠の核となる貝殻の小片を挿入して真珠層を生成させる養殖真珠の技術が確立して以来大量生産が可能となり,日本の独占的産業として発展してきた。真珠は大玉,中玉,小玉,厘玉のサイズ別に,またピンク系やホワイト系など7基調色に分けられ市場に出る。このほかに半円真珠や淡水産真珠も生産されている。サンゴ製品は腔腸動物に属するサンゴ類の骨格を材料とするもので,採取時に生きていたサンゴを生木,死んでいたものを枯木と称する。化学的には大部分炭酸カルシウムよりなるが,研磨することにより美しい光沢がでる。色調は赤・白・桃色のほか,桃色と白のぼけ味のものがある。桃色とぼけは産出量が少なく色彩も美しいので高価である。べっこう製品は中国から加工技術が伝わったとされる長崎県での製造が盛んで,タイマイ,アオウミガメ,アカウミガメの甲羅を材料とする。色,材質などからタイマイが最上である。このほか鯨歯,鯨ひげを材料とする工芸品もあるが,原料不足と合成素材の開発でほとんど生産されなくなった。
執筆者:山口 勝巳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報