日本大百科全書(ニッポニカ) 「アコヤガイ」の意味・わかりやすい解説
アコヤガイ
あこやがい / 阿古屋貝
Marten's pearl oyster
mother-of-pearl
[学] Pinctada fucata martensii
軟体動物門二枚貝綱ウグイスガイ科の二枚貝。真珠養殖の母貝にするので、一般にシンジュガイ(真珠貝)とよばれる。本種は熱帯の西太平洋からインド洋にかけて分布するベニコチョウガイ(紅胡蝶貝)P. fucataの日本型と考えられる。太平洋側では房総半島以南、日本海側では山形県以南に分布し、奄美(あまみ)諸島まで及ぶ。天然では潮間帯から水深10メートルぐらいまでの岩礁に足糸で固着し生活している。成体の殻長、殻高とも約80~100ミリメートルとなり、左殻は右殻より膨らみが大きい。背縁のかみ合せはまっすぐで長く、殻頂は前方に寄り、低い。前端は三角形の前耳となり、右殻の前縁に足糸の出る切れ込みがある。後端も三角形の後耳となり、いくぶん延びる。殻表は成長脈に沿って雲母(うんも)状片が重なり檜皮(ひわだ)状。普通、淡褐色で黒紫色の雲状斑(はん)や赤、緑、黄などの放射色帯がみられ、殻皮の鱗片(りんぺん)上にも横紋斑がある。内面は強い真珠光沢をもち、縁部の稜柱(りょうちゅう)層は黄褐色で黒斑帯がある。産卵期は5~9月。
養殖真珠生産のための母貝は天然稚貝(ちがい)を採取して養成するが、人工孵化(ふか)採苗も行われる。手術は2~3年の貝を用い、産卵の際、核(淡水貝の貝殻を丸くした真珠を巻かせる芯(しん))が放出されないようあらかじめ産卵抑制か卵抜きをする。手術は核にほかの貝の外套膜(がいとうまく)の4~9平方ミリメートルの組織片(ピース)を添えて挿入し、核の周りに真珠層を分泌させる。
[奥谷喬司]