改訂新版 世界大百科事典 「永嘉四霊」の意味・わかりやすい解説
永嘉四霊 (えいかしれい)
Yǒng jiā sì líng
中国,南宋時代,13世紀の初頭に活躍した4人の詩人をいう。4人とも永嘉(浙江省永嘉県)の人であり,字号に霊の字を含むから永嘉四霊と称された。すなわち,徐照(?-1211,字は霊暉),徐璣(1162-1214,号は霊淵),翁巻(生没年不明,字は霊舒),趙師秀(?-1219?,号は霊秀)の4人である。徐璣と趙師秀は仕官の経験をもつが,微官であり,徐照と翁巻は終生野に在った。民間詩人の最初に位置しており,いわゆる〈江湖派〉の先駆となった。古典中の語句の運用を詩作の根底におく〈江西派〉に対抗し,典故を重視せず,眼前の景物や自己の心情を率直に表現する白描詩の創作に努めた。江西派が盛唐の杜甫を祖述するのに対し,晩唐の詩,ことに姚合を模範とする。徐照に《芳蘭軒集》,徐璣に《二薇亭集》,翁巻に《葦碧軒集》,趙師秀に《清苑斎集》がある。
執筆者:荒井 健
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