中国,北宋時代にすぐれた青磁を焼いた窯。河南省臨汝県にあったといわれているが,窯址は確認されていない。《高麗図経》や南宋の周輝《清波雑志》などに汝窯に関する記載があり,〈汝窯は宮中禁焼なり。内に瑪瑙末ありて油となす。唯だ御に供し,揀(えら)び退けてまさに出売を許す。近ごろ尤(もつと)も得がたし〉とあり,汝窯の青磁をとりわけすぐれたものと絶賛している。昭和初め,大谷光瑞の命を受け,原田玄訥が河南省臨汝県を踏査して臨汝窯窯址から青磁を採集しているが,これはいわゆる耀州窯系の北方青磁であり,北京の故宮博物院や台湾の故宮博物院に伝世する汝官窯とされるものとは異なっている。いわゆる汝官窯とされるものは文様がなく,明るい青磁釉が厚くかかり,高台裏に小さい目跡がいくつもついている。日本には輪花盤や皿など数点が知られているだけである。
執筆者:弓場 紀知
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、宋(そう)代の青磁の名窯。汝窯には二つの義がある。一つは河南(かなん/ホーナン)省臨汝(りんじょ)県厳和店、軋花溝(あっかこう)、下任村、蜈蜙山(ごしょうざん)、陳溝、桃山溝、崗溝(こうこう)、陳家荘、黄窯、石板河に広く分布している古窯址(し)、いわゆる地方青磁の窯の意である。灰白色の素地(きじ)にオリーブグリーンの深い青緑色の青磁釉(ゆう)をかけた、滋味豊かな青磁で、南方の越州窯の陶技を受け北宋前期に開窯したと推測され、北宋末から金代に秀作を焼造した。これに対していま一つは北宋官窯の意で、汝官窯あるいは汝窯とよぶ。南宋の周輝が『清波雑志』のなかで、「汝州は宮中の禁焼なり」と述べていることを踏まえて、ここに官窯があったと考え、世に伝存する失透性の高貴な一群の青磁を汝官窯とよぶ。この場合、作品を古窯で裏づける実証はない。
[矢部良明]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一般に民窯に対するものとしての官窯は,権力者,政府などが管理した陶窯のことで,中国の景徳鎮官窯をはじめ,韓国の広州官窯,日本の鍋島藩窯など,さまざまの性格のものがある。狭義の官窯は,宋時代に宮中の御用品としての青磁を焼いた,いわゆる宋官窯のことで,北宋官窯・汝窯(汝官窯)・南宋官窯(修内司窯・郊壇窯)がこれに当たる。その製品は中国の最もすぐれた青磁として喧伝され,竜泉窯その他でさかんに模倣が行われた。…
※「汝窯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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