中国,明末・清初,江蘇常熟にいた毛晋(1599-1659,字は子晋)の書庫の名。毛晋は大変な書物好きで,宋元版多数を含む8万数千冊の蔵書を誇り,汲古閣,目耕楼という書庫を建ててそれらを収蔵した。汲古とは井戸から水を汲むように古書に知識を求めること,目耕とは田畑を耕すように目を駆使して勉強することである。毛晋は蔵書家であるだけでなく,蔵書を利用した大規模な古書の復刻をも行った。《十三経注疏》《説文解字》《十七史》《文選》《宋名家詞》《六十種曲》《津逮秘書》等は,そのうちでも特によく行われ,学界に便宜を与えたものであり,それらの多くは久しいあいだそれぞれの分野で最も重んぜられるテキストでありつづけた。これらの復刻本は〈汲古閣本〉あるいは〈毛本〉と呼ばれる。毛氏が人を雇って行った貴重書の写本作りも精密極まるもので,特に〈毛鈔〉と呼ばれることがある。子の毛扆(もうえい)(1640-?,字は斧季(ふき))も父を助けて古書校刊の事業に従事した。〈毛本〉の刊行は毛氏父子共同の業績と考えるべきものであろう。
執筆者:尾崎 雄二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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