デジタル大辞泉
「治める」の意味・読み・例文・類語
おさ・める〔をさめる〕【治める】
[動マ下一][文]をさ・む[マ下二]
1 「収める4」に同じ。「暴動を―・める」「丸く―・める」
2 世の中や家の中を秩序ある状態にする。統治する。「国を―・める」「家を―・める」
3 病気などを治す。
「その病を―・むる方を定む」〈吉田本神代紀・上〉
[類語]統べる・治まる
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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おさ・めるをさめる【治・修・納・収】
- 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
[ 文語形 ]をさ・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙 - [ 一 ] ( 治・修 ) ものごとを安定した状態にする。整った状態にする。
- ① 主権者として国の政治をとる。国民や国土を統率・制御する。
- [初出の実例]「万の民を宰(オサムル)ことは、独り制(おさ)む可からず」(出典:日本書紀(720)孝徳・大化二年三月(北野本訓))
- 「世ををさむる道、倹約を本とす」(出典:徒然草(1331頃)一八四)
- ② 混乱した状態をしずめる。平定する。また、物事を穏やかにかたづける。落ち着いた状態にする。収拾する。
- [初出の実例]「あまざかる ひなも乎佐牟流(ヲサムル) ますらをや」(出典:万葉集(8C後)一七・三九七三)
- 「成る可くは叔父に告げずして事を収めたい」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
- ③ 自分の行ない、態度、心などを整え正す。
- [初出の実例]「其れ公卿・百寮の人等をして、酒完を禁断ちて、心を摂(ヲサメ)、過ちを悔ひ令めよ」(出典:日本書紀(720)持統五年六月(北野本訓))
- 「身を治め、国を保たん道も、またしかなり」(出典:徒然草(1331頃)一一〇)
- ④ (病気、飢えなどを)なおす。治療する。
- [初出の実例]「能く衆の病と四大の増損とを療(ヲサメ)たまふと雖も」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九)
- ⑤ 建物を整え造る。造営する。
- [初出の実例]「畿内及び諸国に詔して、天社、地社の神宮を修理(ヲさ)む」(出典:日本書紀(720)天武一〇年正月(北野本訓))
- ⑥ (こわれた所、乱れている所などを)なおし繕う。修理する。
- [初出の実例]「鬢髪の蓬乱(ふくだ)めるをもかきも収(ヲサ)めず」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
- 「壁の土くづれ落しあまた所あれば、くづれしつち水にひたして、そのやぶれを修め塗らしむ」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)上)
- ⑦ 川などが氾濫しないようにする。
- [初出の実例]「人民に工業を教へ、或は川を修め、溝を開きて農業の便利を興し給ひき」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉六)
- ⑧ 責任をもって世話をする。
- [初出の実例]「若し此の御子を、天皇の御子と思ほし看(め)さば、治(をさめ)賜ふべし」(出典:古事記(712)中)
- ⑨ 気持を落ち着かせる。
- (イ) ( 多く「心(を)おさめる」の形で ) 乱れた心をしずめる。こらえる。
- [初出の実例]「閑(しづ)かなる所に念を収て心を閑て不姦(さわがしから)ず」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
- 「さるまじき人のうらみを負ひしはてはては、かううち捨てられて、心おさめん方なきに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
- (ロ) ( 目的語をとらないで自動詞的に用いる ) のんびりする。落ち着く。とりすます。
- [初出の実例]「かの男おさめたる声つきにて」(出典:浮世草子・好色万金丹(1694)二)
- ⑩ 学問、技芸などを正統な形で身につける。修業する。
- [初出の実例]「節倹を努め修(ヲサム)」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)五)
- [その他の文献]〔和英語林集成(初版)(1867)〕
- [ 二 ] ( 収・納 ) 物事をあるべき所に落ち着かせる。
- ① 他への働きかけのために出していたものをもとの場所へもどす。
- (イ) 武器や道具などをひっこめる。しまいこむ。片付ける。
- [初出の実例]「甲(よろい)を巻(ま)き、戈(ほこ)を戢(ヲサメ)て、愷悌(いくさと)けて還(かへ)れり」(出典:日本書紀(720)景行四〇年是歳(北野本訓))
- 「うろたへもの、コリャ何(どう)する。相手がさやへ納(オサメ)るは丸腰も同前、さやへ納めぬか」(出典:歌舞伎・毛抜(1742))
- (ロ) 手や翼などを内に曲げ縮める。
- [初出の実例]「病者涙を流し、喜びて手を刄(ヲサメ)て領状(りゃうじゃう)す」(出典:私聚百因縁集(1257)三)
- 「一隻は翅を近き巖の頂に斂めて」(出典:即興詩人(1892‐1901)〈森鴎外訳〉血書)
- ② 物を整頓された状態で中にしまい入れる。
- (イ) (品物、農作物などを)ある場所にしまう。貯蔵する。たくわえる。
- [初出の実例]「吾妹子(わぎもこ)が赤裳ひづちて植ゑし田を苅りて蔵(をさめ)む倉無しの浜」(出典:万葉集(8C後)九・一七一〇)
- 「孫晨は冬月に衾(ふすま)なくて、藁一束ありけるを、夕にはこれにふし、朝にはをさめけり」(出典:徒然草(1331頃)一八)
- (ロ) 記憶したり記録したりする。
- [初出の実例]「彼は其輪廓と、長いコートに包まれた恰好の可い彼女の姿とを胸に収(ヲサ)めて」(出典:彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉停留所)
- 「後に五弓雪窓が此文を事実文編巻の七十二に収(オサ)めてゐるのを知った」(出典:渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉八)
- (ハ) (農作物を)取り入れる。収穫する。
- [初出の実例]「兵粮米つきぬれば、田つくり、刈りおさめてよせ」(出典:平家物語(13C前)五)
- ③ 人のものを自分の所有にする。受け取る。
- (イ) (公の機関が、物、人、官位などを)強制的にとりたてる。取りあげる。没収する。
- [初出の実例]「悉に妻子を没(ヲサメ)て孥(つかさやっこ)と為」(出典:日本書紀(720)神功五年三月(熱田本訓))
- (ロ) (物や金銭などを)受け取って自分のものにする。また、(意見、忠告などを)受け入れる。
- [初出の実例]「願くは我が志を納て我が罪を免せ」(出典:観智院本三宝絵(984)上)
- 「夫程(それほど)におしゃる成らば納て置う」(出典:虎寛本狂言・八句連歌(室町末‐近世初))
- ④ (物や金銭などを)受け取り手にさし出す。納入する。
- [初出の実例]「朝聘(まうてき)既に闕きて、貢職(みつき)循(オサムル)(〈別訓〉たてまつる)こと莫し」(出典:日本書紀(720)雄略九年三月(前田本訓))
- ⑤ 死体を埋葬したり、火葬にしたりして始末する。
- [初出の実例]「因りて日向の吾平(ひら)山上の陵(みささき)に葬(ヲサメ)まつる」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
- 「限りあれば、例の作法におさめ奉るを、母北の方、同じけぶりにのぼりなんと泣きこがれ給て」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
- ⑥ 物事を終わらせる。(多く他の動詞に付いて)その動作を終わりにする。
- [初出の実例]「息ながくたふやかにのこる内にて云ひをさむべし」(出典:曲附次第(1423頃))
- ⑦ よい結果を得る。
- [初出の実例]「思ひがけなく或実際上の効果を収め得たのであるから」(出典:手紙(1911)〈夏目漱石〉一)
治めるの語誌
首長の意の「ヲサ(長)」を動詞化したものといわれ、本来、統率安定させる意を持ったものと考えられる。類語の「しる(領)」、「すぶ(統)」とは異なり、対象をしかるべき静態的位置・状態に置くという意味あいをふくむ。この「ヲサ」の原義が拡大し、広範囲に使われると、[ 一 ]②以下の用法となり、また、安定してものなどをしかるべき所にもたらす、落ち着けるべき所に落ち着けるというふうに発展すると[ 二 ]の用法となる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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