出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
哲学者。長野県松本市に生まれる。1899年(明治32)帝国大学文科大学哲学科を恩賜の銀時計を授与されて卒業。在学中はR・ケーベルの指導を受けた。1900年東京専門学校(現、早稲田(わせだ)大学)講師。翌1901年講義録を『西洋哲学史要』として刊行。1902年一番町教会で植村正久(うえむらまさひさ)より受洗。1904年ドイツに留学、ベルリン大学、ハイデルベルク大学に学ぶ。1907年東京帝国大学文科大学講師。1908年講義録を『基督(キリスト)教の起源』として刊行。1909年文学博士。1917年(大正6)京都帝国大学教授。晩年1947年(昭和22)には玉川大学長に推挙された。学者としての波多野の前半生は、西洋古典語の修得を含めた語学を駆使して西洋思想の二つの源流――ギリシア哲学とキリスト教思想――の原典研究にあったが、京都時代には人格主義に立脚する独自の宗教哲学の体系化を課題とするようになり、それは『宗教哲学』(1935)、『宗教哲学序論』(1940)、『時と永遠』(1943)の三部作としてまとめられた。
[田代和久 2018年3月19日]
『『波多野精一全集』全6巻(1968~1969・岩波書店)』
宗教哲学者。長野県松本に生まれ,第一高等学校を経て東京帝国大学文科大学哲学科を卒業。1900年東京専門学校(のちの早稲田大学)講師となり,その翌年に名著《西洋哲学史要》を刊行した。その後母校の講師を経て17年京都帝国大学教授となり,宗教学講座のキリスト教学担当として宗教哲学を歴史的かつ体系的に構築した。《宗教哲学》(1935),《宗教哲学序論》(1940),《時と永遠》(1943)がその三部作。プラトンのイデア論が文化の追求たるエロスで終わることを示して,人格宗教をこれに対置させ,カントとシュライエルマハーに拠りつつも,人格の核となる宗教体験をアガペによって解釈し,かつアガペの象徴的意義を深くとらえたことに彼の宗教哲学の意義がある。49年日本学士院会員。
執筆者:泉 治典
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