日本映画。1981年(昭和56)作品。原作は宮本輝(みやもとてる)。浦山桐郎の助監督をしていた小栗康平(おぐりこうへい)の初監督作品。製作木村プロダクション。1956年(昭和31)、大阪の河辺の食堂の息子、信雄は荷車から鉄屑(てつくず)を盗もうとしていた少年、喜一に出会う。喜一は対岸に係留している舟に住んでおり、そこには姉の銀子もいる。彼らを食堂に招き、父や母とも交流するようになるが、あるとき、信雄は舟で喜一の母が客をとるところをのぞいてしまう。翌日、舟は去ってゆく。まだ戦争の記憶があり、軍需景気に沸く昭和30年代の庶民の生活と哀感を、繊細かつ残酷に描き出す。映画は寡黙な信雄の視点で、子どもや大人たちの世界をみせる。どこか大人びた優しい姉、唐突に軍歌「戦友」を歌う喜一、父の別れた元妻のお見舞い、舟の上で蟹(かに)に火をつける遊び、喜一の母の秘密、禁忌(きんき)の廓舟(くるわぶね)。信雄は世界の複雑さを知り始める。安藤庄平(あんどうしょうへい)(1933―2011)の撮影がみずみずしい。田村高廣(たむらたかひろ)(1928―2006)(父)、藤田弓子(ふじたゆみこ)(1945― )(母)、加賀まりこ(かがまりこ)(1943― )(喜一の母)が脇を固めている。白黒・スタンダード。キネマ旬報ベスト・テン第1位。
[坂尻昌平]
「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...
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