マレー半島に置かれたイギリスの直轄植民地の総称(1832-1946)。具体的にはペナン(対岸のウェルズリー地方を含む),マラッカ(ディンディングズ諸島を含む),シンガポール(北ボルネオのラブアン島を含む)からなる。これらの各地は18世紀末から19世紀初めにかけてイギリス東インド会社が獲得したもので,1824年の英蘭協約によってイギリスの領有権が確認された。海峡植民地を運営したのは初め東インド会社であったが,1858年の同社の解散に伴い,インド省の管轄下に移され,67年に直轄植民地となった。上記3地域とも商品作物の生産には成功せず,立地条件と自由港という利点にたすけられ,国際貿易港として重要な役割を果たすことになった。同時に,マレー半島全体にイギリスの支配を及ぼす基地としても役立った。その結果,1896年には海峡植民地以外のペラ,スランゴール,パハン,ヌグリ・スンビランの4州がマレー連合州としてイギリスの支配下に入り,これに組み入れられなかったプルリス,ケダ,クランタン,トレンガヌ,ジョホールの5州も名目的に独立を保持するだけで,実際はイギリスの支配下に入った。海峡植民地を含めたこれらをイギリス領マラヤと総称した。
海峡植民地はマレー半島のゴム,スズの輸出に基礎を置くばかりでなく,中継貿易基地として繁栄した。なかでもシンガポールが重要であった。住民構成は,少数のイギリス人など白人のほかは,中国人,インド人,マレー人がほとんどを占め,海峡植民地はまた中国人,インド人商人の活動の基地でもあった。
執筆者:生田 滋
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イギリスがマレー半島に保有した植民地。イギリス東インド会社は1786年にはペナン、1819年にはシンガポールを植民地として獲得し、24年にオランダから譲渡されたマラッカとともに26年に東インド会社のベンガル管区の管轄下に置かれ、海峡植民地Straits Settlementsとよばれた。1851年インド総督の直轄植民地となり、58年インド省の所管、66年には植民地省の所管となった。イギリスの最初の意図は、これら各地を商品作物の産地とすることであったが、これは成功せず、国際貿易港としての活動が主となった。その結果、シンガポールがペナン、マラッカを圧倒し、イギリスの東アジア、東南アジアにおける活動の中心地の一つとなった。
海峡植民地の知事は、連合州、非連合州、海峡植民地によって形成されるイギリス領マラヤの実質的な支配者であった。第二次世界大戦後イギリスはこれを放棄し、海峡植民地はシンガポール、ペナン、マラッカの3州に分かれ、ペナン、マラッカはマラヤ連邦の一員となった。シンガポールは1959年自治国となり、63年完全独立ののちマレーシア連邦に加盟したが、65年に分離独立した。
[生田 滋]
『池端雪浦・生田滋著『東南アジア現代史Ⅱ』(1977・山川出版社)』
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1826~1946年にマレー半島周辺地域に存続したイギリスの直轄植民地。ペナン(マレー半島のウェルズリー地方を含む),マラッカ(ディンディンス諸島を含む),シンガポール(ボルネオ北部のラブアン島を含む)の3地域からなる。当初イギリス東インド会社によって運営されたが,1867年から直轄植民地となった。
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…イギリスはシンガポールで商品作物を生産して,それを輸出するために獲得したのであるが,商品作物の生産は成功せず,自由港として発展することになった。シンガポールなど3植民地の地位は24年の英蘭協約によって確認され,32年には海峡植民地としてまとめられた。イギリスは海峡植民地を基地としてマレー半島の諸国に徐々に政治的支配を及ぼし,95年にはマレー連合州を組織した(正式発足は翌年)。…
…ナポレオン戦争が終わると,会社はムラカをオランダに返還したが,ラッフルズはオランダに対抗するために,マラッカ海峡の出口付近に根拠地を獲得することを主張し,1819年にシンガポールに植民地を獲得した。1824年に英蘭協約が締結され,ペナン,ムラカ,シンガポールが会社の植民地となり,海峡植民地と呼ばれた。シンガポールは自由港とされ,東南アジア地域の国際貿易の中心地として繁栄するようになった。…
※「海峡植民地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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