鋼材の表面に窒素を浸透拡散させることによって表面層だけを硬化させ,耐摩耗性,その他の性質がすぐれた材料にする表面硬化法。窒化は歯車,ピストンリング,機械の摺動部の部品などに行われるが,それらの鋼材は,窒素と親和力の強いアルミニウム,クロム,モリブデン,チタン,マンガンなどを含む合金鋼であり,とくに窒化鋼と呼ばれる。窒化は窒素源の種類により気体(ガス)窒化,液体窒化に大別される。
(1)気体(ガス)窒化法gas nitriding 被処理材を500~550℃のアンモニア気流中で20~100時間加熱保持すると,アンモニアが分解して発生期の窒素と水素を生じ,この窒素が鉄と化合してFe2N(ε),Fe4N(γ′)などの窒化物をつくり,窒化層を形成する。この窒化層が非常に硬くビッカース硬さで1000くらいになり,耐摩耗性に富んだ表面層が形成される。
(2)液体窒化法liquid nitriding 被処理材を,シアン化ナトリウムNaCN,シアン化カリウムKCNなどを主成分とする塩浴中で,500~600℃,1~5時間加熱保持する。塩浴の反応は浸炭の場合と同じであるが,温度が低い場合には窒化がおこる。表面硬さはビッカース硬さ1000くらいになり,耐摩耗性,疲れ強さが向上する。また,硬さの上昇を主目的とせず,疲れ強さ,耐食性などの性質の改善を目的として,シアン化物によらずに窒素を固溶させて硬化することを狙った方法がある。これは軟窒化法といわれ,西ドイツで開発されたタフトライド法などがある。
最近では,シアンなどの廃水公害問題があるため,浸炭性ガスとアンモニアガスの混合雰囲気中で処理するガス軟窒化法が多く行われている。さらに,処理時間が長い,窒化層がもろいなどのガス窒化の欠点を補ったイオン窒化法(グロー放電を利用し,ある決まった割合の窒素と水素ガスを装入して窒化する)なども行われている。
執筆者:今井 八郎
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アルミニウムやクロムを約1%含有する鋼をアンモニアガス中で加熱(約500℃で50時間)すると、アンモニアが分解して、窒素原子が鋼の結晶中に侵入し、AlNやCrNのような窒化物を形成する。このとき、鋼の結晶内に大きなひずみが生じて著しく硬くなる。この現象を利用して、鋼材の表面層を硬化する処理を窒化法という。窒化法に適するように組成を調整した鋼が窒化用鋼である。ステンレス鋼や耐熱鋼もクロムを含有しているので、窒化を行うことができる。なお、鋼の表面硬化法のなかでもっとも普及しているのは浸炭法で、炭素原子を侵入させたのちに、急冷(焼入れ)することによって初めて硬くなる。これに対して窒化法では、急冷しなくても硬化するのが特徴である。溶融したシアン化ナトリウム中に鋼材を浸漬(しんし)して、浸炭と窒化の両方を同時に行い、急冷して硬化させる浸炭窒化法も現在盛んに利用されている。
[西沢泰二]
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