ラバー消しゴムとプラスチック消しゴムに大別される。メキシコを起源とするゴムが新大陸発見によりヨーロッパに伝えられ〈カウチュクcaouthouc〉と呼ばれていたころ,羊皮や紙についた木炭や鉛筆の跡を消すのには軟らかいパンが用いられていた。1770年イギリスの化学者J.プリーストリーがカウチュクに字を消すrub-out性能があることを発見し,ラバーrubberと命名した。当時ゴムはたいへん高価で,硬化し紙を削る欠点があり,1839年出版のビギエConstant Viguierの細密画の画法指針ではこの点を警告している。39年のグッドイヤーの加硫法発明以降は良質のゴムの製造が可能になり,ドイツ,フランス,アメリカで消しゴム企業は発達していった。アメリカでとくに好まれる消しゴム付鉛筆は,58年フィラデルフィアのL.リップマンが特許をとった。
日本では明治維新後に鉛筆といっしょに普及したが,1910年代までは輸入品のみで,A.W.フェバーのクジラ印が最高級とされていた。プラスチック消しゴムは50年ころに玩具メーカーの作ったビニル消しゴムから改良されたもので,70年代には消字性能が向上し事務用に普及したため,現在の生産量はプラスチックが7割を超えている。組成は,ラバー消しゴムは天然ゴムと白サブスティテュート,プラスチック消しゴムは塩化ビニル樹脂を主成分とし,鉛筆のカーボンを吸着し,かすに巻き込んで廃出するしくみである。インキやボールペンの跡は摩擦でこすりとる。鉛筆の濃度別に組成を変えたもの,クリーニング用などもある。
執筆者:殖田 友子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
字消しのことで、鉛筆などで書いたものを消す用具。かつてはすべてゴムを原料としていたところから「消しゴム」「ゴム消し」などとよばれているが、現在鉛筆用消しゴムでは、塩化ビニル樹脂を原料としてつくられたプラスチック消しゴムが主流となっている。種類は、用途別に(1)鉛筆用(品質により普通品と高級品とがあり、香料を入れた香り付きのものもある)、(2)インキ用(ボールペンインキや印刷インキなどを消すのに用いる)、(3)両用(鉛筆用とインキ用が半分ずつ接合しているタイプ)、(4)タイプライター用があり、そのほか形態では、繰り出し式のものや鉛筆型(木軸と紙巻きタイプ)などがある。
イギリスの化学者ブリーストリーが1772年にゴムの消字性を提唱して以来、フランスをはじめヨーロッパ全土で使用され始めた。日本では1886年(明治19)に、東京・本所の土谷(つちや)ゴム製造でつくられたのが最初だが、大正初期まではおもに品質のよい外来品に依存していた。昭和初期には品質も向上し、現在では欧米に輸出するまでになっている。なお、プラスチック消しゴムは1952年(昭和27)に特許出願されたが、普及したのは品質の改良が進んだ65年以降のことである。
[野沢松男]
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の大学ブランド商品」事典 日本の大学ブランド商品について 情報
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