知恵蔵 「涙活」の解説
涙活
また、ストレス解消に効果があるのは、感動などによる涙であるともしている。したがって、目を潤すための基礎分泌の涙や、タマネギを切った際などに出る角膜保護の涙は、ストレス解消につながらないことになる。東邦大学医学部生理学教授の有田秀穂は、映画などを見て登場人物に共感することで流す涙は、多くの感情を蓄積させて泣いているために効果が大きく、ストレス緩和効果が絶大だとしている。
また、ストレスがたまっている状態では、呼吸が浅くなっていることが多い。そんな時にも、泣くことにより呼吸を整えたり筋肉をゆるめたりすることで、緊張をほぐすことができるという。
涙活は悲しいことがあって「毎日のように泣いている」という人にも好影響があるという。自分自身の経験で「悲しみの涙」を流すのと、感動的な動画などに共感して「感動の涙」を流すのとでは感覚が全く異なる。いずれもストレスは解消されるが、よりいいのは自分と直接関係がなく、それでいて共感できるものを見たり聞いたりして泣くことであるとされる。涙活では「共感脳」と言われる前頭前野部分に刺激を与えることが重要で、そのことによって「悲しみに支配されて沈んでいた気持ち」が軽減されるというのだ。
寺井は、自身が手掛ける離婚式で、多くの男女が大粒の涙を流し、涙が出尽くすころにはスッキリした顔になっていることから、泣くことが人の感情を浄化させると確信した。その後、「涙活」の普及を目指し、月に数回、泣ける映画や音楽、詩の朗読を聞いて意識的に涙を流す涙活イベントを開催している。
(若林朋子 ライター / 2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報