渡り鳥と絶滅のおそれのある鳥類とその生息環境を国際協力で保護するための二国間の条約または協定。
日本に生息する野鳥の4分の3は太平洋、中国、ロシア、北米大陸、東南アジア諸国から渡ってくる。それらの渡り鳥を保護するためには、国際的に捕獲禁止などの措置をとる必要があった。
1972年(昭和47)日本はアメリカとの間に「渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」(対象となる渡り鳥の数190)を結び、1973年にはソ連(現在はロシア)との間に「渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその生息環境の保護に関する日本国政府とソビエト社会主義共和国連邦政府との間の条約」(対象となる渡り鳥の数287)、1974年にはオーストラリアとの間に「渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定」(対象となる渡り鳥の数77)、1981年には中国との間に「渡り鳥及びその生息環境の保護に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定」(対象となる渡り鳥の数227)にそれぞれ調印し、渡り鳥および絶滅のおそれのある鳥類の保護についての国際協力を強化することとした。
このいわゆる「渡り鳥条約」の内容は、(1)両当事国間を移動する渡り鳥の捕獲等を規制するとともに、これらの鳥類および加工品等の販売交換等の流通を規制すること、(2)絶滅のおそれのある鳥類およびこれらの鳥類の加工品等の輸入を規制すること、(3)渡り鳥および絶滅のおそれのある鳥類が生息する環境の保全、改善のため適切な措置をとること、(4)渡り鳥および絶滅のおそれのある鳥類に関する共同研究、資料の交換を行うこと、などである。
なお、これらの条約や協定を契機として、日本、アメリカ合衆国、ロシア、オーストラリア、中国の5国は、絶滅のおそれがある鳥の保護に協力するために、それぞれ自国の該当する種や亜種をリストアップした。それらの鳥は一般に特殊鳥類の名でよばれている。
[加瀬信雄]
…春の渡りは繁殖をひかえているので比較的早く,秋の渡りは繁殖も終え幼鳥も交えているので,春よりも渡り日数がやや長いように思われる。【中村 司】
[日本における渡り鳥の法的保護]
渡り鳥の国際保護を推進するために〈渡り鳥条約〉と呼ばれる二国間条約・協定が締結されている。〈渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその環境の保護に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約〉(1972年3月4日署名,1979年9月19日発効),同じく旧ソビエト社会主義共和国連邦政府との間の条約(1973年10月10日署名),同じくオーストラリア政府との間の協定(1974年2月6日署名,1981年4月30日発効),〈渡り鳥及びその生息環境の保護に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定〉(1981年3月3日署名,1981年6月8日発効)があげられる。…
※「渡り鳥条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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