点火栓,あるいはスパークプラグともいう。ガソリンエンジンなどの火花点火式内燃機関において,燃焼室内の燃料空気混合気に点火させるための部品。高電圧による電気火花を飛ばすための放電電極をもつ。その主要部は,中心部の導体棒とこれを包む絶縁体およびこれらを支え機関にねじで締め付け固定するための金具(プラグ体)からなり,中心部導体の先端に取り付けられた中心電極とプラグ体の先端に取り付けられた外側電極とで放電電極を構成し,この部分が燃焼室内に突き出すように装着される。中心電極は一般に銅棒の先端にニッケル合金の電極部分が付けられたものが多く,絶縁体はアルミナを主体とする磁器,金具は鋼材より作られる。点火プラグに要求されるのは,機関のさまざまな負荷(運転状態)に対応してその混合気に確実な点火を保証することであり,構造,材料に細かいくふうがなされている。中心電極と絶縁体の温度は,あらゆる運転状態に対して500~800℃に保つことが必要とされるが,これは長時間低温のままであるとその部分の絶縁抵抗が下がり放電を妨げる一方,高温になると過早点火の原因となるからである。この温度は機関の負荷とプラグの熱放散量によって決まるが,このプラグの熱放散の程度を示したものがプラグの熱価である。熱価の高いものは熱が逃げやすく,比較的高負荷で使われることの多い機関に適する。また熱価の高いものを冷え形,低いものを焼け形ということもある。放電電極の隙間は0.5~0.8mm程度がふつうであり,一般に隙間は大きいほうが着火性はよくなるが,要求電圧も高くなるので,点火電源の能力を超えると失火が起こる。電気火花点火方式の実用化は1860年ころのルノアール機関にさかのぼることができるが,他の点火方式(火炎法,熱管法,低圧点火法など)を駆逐するに至ったのは1930年代におけるアルミナ磁器の発明によるところが大きい。
執筆者:酒井 宏
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ガソリンエンジン、石油機関などで燃料と空気の混合気を点火するための高圧電気火花を飛ばす装置。点火栓ともいう。機関のシリンダーヘッドに取り付けられ、一端は燃焼室に突出し、火花放電をおこす間隙(かんげき)をつくっている。構造は中心電極、絶縁体、胴体からなり、感応コイルで発生した二次電流を中心電極に与える。二次電圧が点火栓の間隙の絶縁を破るほど高いため、中心電極と胴体に取り付けた電極の間に火花放電がおこる。胴体はエンジンへの取り付け部ともなり、点火装置の接地とエンジンの接地は共通なので回路が構成される。点火栓の絶縁体は1万ボルト以上に耐えるように磁器、酸化アルミニウム、雲母(うんも)などが用いられ、点火栓の温度を適当に保つように負荷に応じて数種類の冷却の程度の異なるものがある。
[吉田正武]
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