ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘッド」の意味・わかりやすい解説
ヘッド
Head, Bessie Emery
[没]1986.4.17. ボツワナ,セローウェ
南アフリカ共和国の女性作家。母はヨハネスブルクの富裕な白人競走馬主の家の生まれだが,結婚に失敗して実家に戻り,厩番の黒人と関係を結んで妊娠,遠く離れたピーターマリッツバーグの精神病院に幽閉された。その病院で生まれたヘッドはただちに里子に出され,13歳でダーバンの孤児院に入れられる。同地で中学校を卒業,教員資格を得た。短期間の教師生活ののち,1960年代初めはケープタウンやヨハネスブルクでジャーナリストをしていた。1961年ケープタウンで結婚,1児をもうけたが,1964年子供を連れてボツワナへ亡命。教師生活などを経験しながら,1979年にボツワナ市民権を獲得した。病弱で神経症にも悩みながら,苦難の生活とボツワナでの生の新鮮さと希望を小説に綴り,やがて国際的に知られるようになる。第1作は人種差別下での人種間の協調を描く『雨雲が集まる時』When Rain Clouds Gather(1968),以後『マル 愛と友情の物語』Maru(1971),『力の問題』A Question of Power(1973),短編集『宝を集める人 ボツワナの村の物語』The Collector of Treasures(1977),『セロウェ――雨風の村』Serowe: Village of the Rain Wind(1981)など。1986年,肝炎で死去。死後に自伝『ひとりぼっちの女』A Woman Alone(1990)が出版された。アパルトヘイト体制の犠牲となって生き,死後に世界的に評価が高まった典型的作家である。(→アフリカ文学,南アフリカ文学)
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