歌論書。京極(きょうごく)為兼著。1285~87年(弘安8~10)成立。執筆対象は当時の春宮(とうぐう)、伏見(ふしみ)天皇か。巻末の文体の乱れから未定稿ともされる。伝統歌風を墨守する二条派に対抗し、為兼が自らの革新的歌風の根本理念を説いた書で、万葉、新古今歌人、実朝(さねとも)、明恵(みょうえ)の作歌態度を引き、空海の『文鏡秘府論(ぶんきょうひふろん)』等によって、心の絶対的尊重と詞(ことば)の完全な自由化を主張。「心のままに詞のにほひゆく」の語は後年の京極派秀歌の真髄を予言した名言。なお、仏教的にも注意すべき論書である。
[岩佐美代子]
『土岐善麿著『訳注為兼卿和哥抄』(1963・初音書房)』▽『福田秀一著『中世和歌史の研究』(1972・角川書店)』
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…《後鳥羽院御口伝(ごくでん)》,順徳院《八雲御抄(やくもみしよう)》は,俊成,定家の論を踏まえつつ,歌人論,作品論にあらたなる展開を示している点で注目され,鴨長明《無名抄(むみようしよう)》も,〈幽玄〉に言及している。 その後,定家の子の為家の《詠歌一体(えいがいつてい)》(偽書説もある)が平淡美を主唱し,京極為兼の《為兼卿和歌抄》が〈心のままに詞の匂ひゆく〉表現をよしとして,いっそうの心の重視を説いた。《為兼卿和歌抄》は《玉葉和歌集》の新風の理論的背景を知るうえで重要である。…
※「為兼卿和歌抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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