墨守(読み)ぼくしゅ

故事成語を知る辞典「墨守」の解説

墨守

頑強にり通すこと。自説や旧習などをかたく守って譲らないこと。

[使用例] これ守して退くは之を活用して進むにかず[福沢諭吉*文明論之概略|1875]

[使用例] くして数十年にわたる天文学の難題はかんぜんひょうしゃくして、学者も世間も相対性原理を信用するに至った。ただ、古典式を墨守する人はこの限りにはいらない[長岡半太郎*アインシュタイン博士のこと|1948]

[由来] 「墨子こうしゅ」に見える話から。紀元前五世紀ごろ、中国の戦国時代。こうしゅはんという技術者が、敵の城壁を乗り越えるのに便利な「うんてい」という大きなはしごを開発し、の国の王に献上しました。王は、この新兵器を使って、そうの国を攻めようと計画します。それを伝え聞いた非戦主義者の墨子は、楚王のところに駆けつけ、攻撃をやめさせようとしました。しかし、楚王は新兵器を試してみたくてしかたありません。そこで、墨子は公輸盤を相手に模擬戦を提案。九回戦って九回とも勝ち、雲梯を使って攻められても城を守りきることができることを示したのでした。

[解説] ❶墨子は、孟子や荘子と並ぶ中国古代の思想家の一人ですが、非戦主義者であるとともに、高い築城技術を持つ技術者でもありました。この話で行われた模擬戦の詳細はわかりませんが、新兵器で攻められてもびくともしない城の築き方を示したのでしょう。❷この話から生まれた「墨守」とは、本来は「守りがとても固い」という意味。「信念を守り抜く」というプラスのニュアンスで使うこともできますが、現在では、「自分の考えを守り過ぎて、変化を受け入れられない」というマイナスのニュアンスで用いるのがふつうです。

〔異形〕きゅうとう墨守。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「墨守」の解説

墨守
ぼくしゅ

かたくなに守り通すことや、自説や我意を固持して曲げないことをいう。中国、戦国時代初期の周の思想家墨翟(ぼくてき)(墨子)が、宋(そう)の軍に加わって楚(そ)軍と戦った際、楚の魯般(ろはん)(公輸盤(こうしゅはん))が発明した新兵器の雲梯(うんてい)を用いて、9回にわたり攻撃を仕掛けたが、ついにこれを耐えしのいで城を守り抜いた、と伝える『墨子』「公輸篇(へん)」の故事による。

[田所義行]

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精選版 日本国語大辞典「墨守」の解説

ぼく‐しゅ【墨守】

〘名〙 (墨子がよく城を守って、楚の軍をしりぞけたという故事から) 頑固に守り通すこと。また、自説をかたく守って変えないこと。
※本朝文粋(1060頃)九・後漢書竟宴詠史得龐公詩序〈紀長谷雄〉「発彼先儒之墨守、撃以後学之蒙求」 〔後漢書‐鄭玄伝〕

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デジタル大辞泉「墨守」の解説

ぼく‐しゅ【墨守】

[名](スル)《中国で、思想家の墨子が、宋の城をの攻撃から九度にわたって守ったという「墨子」公輸の故事から》自己の習慣や主張などを、かたく守って変えないこと。「旧説を墨守する」
[類語]固守固持堅持堅守死守守る

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普及版 字通「墨守」の解説

【墨守】ぼくしゆ

墨家の守備。自説を守る意に用いる。〔墨子、公輸〕盤、九たび攻變を設け、子子九たび之れを(ふせ)ぐ。盤の攻械盡き、子子の守圉(しゅぎょ)は餘りり。盤、(くつ)す。

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