近代秀歌(読み)キンダイシュウカ

デジタル大辞泉 「近代秀歌」の意味・読み・例文・類語

きんだいしゅうか〔キンダイシウカ〕【近代秀歌】

鎌倉前期の歌論集。1巻。藤原定家著。承元3年(1209)成立和歌歴史を述べ、古い言葉を用いつつ新しい感覚を表すことを説き、秀歌の例を引く。

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精選版 日本国語大辞典 「近代秀歌」の意味・読み・例文・類語

きんだいしゅうか‥シウカ【近代秀歌】

  1. 鎌倉前期の歌論書。一巻。藤原定家著。承元三年(一二〇九)成立。源実朝の問に答えた書簡体の書。和歌の歴史を述べた後、古い言葉、新しい感覚で寛平以後の歌にならうことを説き、秀歌の例を引いたもの。自筆本が残され、定家の歌論中、最も信頼性が高い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「近代秀歌」の意味・わかりやすい解説

近代秀歌
きんだいしゅうか

藤原定家(ていか)の歌論書。元来1209年(承元3)将軍源実朝(さねとも)の求めに応じて書き贈ったもの(遣送本(けんそうぼん))。本文は消息体で詠歌の心得を説き、末尾に秀歌例を付す。歌論の要点は初めに紀貫之(きのつらゆき)以来の和歌史批判を通して源経信(つねのぶ)、源俊頼(としより)らいわゆる近代六歌仙の革新や若き日の定家らの新風の根拠を明らかにし、かつ「寛平(かんぴょう)以往」(六歌仙時代)の在原業平(ありわらのなりひら)、小野小町にみられる「余情妖艶(ようえん)の体」を理想とせよといい、そのための方法として「本歌取(ほんかどり)」論を展開する。例歌は当初近代六歌仙のもの計20余首であったが、のちに『二十四代集』(定家八代抄)からの80余首と差し替え(自筆本が現存する)、また遣送本と、それとの中間もしくは合成形態とみられるものや、その他の系統の諸本がある。定家歌論の眼目の書。

福田秀一

『藤平春男他校注・訳『日本古典文学全集50 歌論集』(1975・小学館)』『福田秀一他編『鑑賞日本古典文学24 中世評論集』(1976・角川書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「近代秀歌」の意味・わかりやすい解説

近代秀歌
きんだいしゅうか

鎌倉時代前期の歌論書。藤原定家著。大別して流布本と自筆本との2系統がある。流布本は承元3 (1209) 年源実朝に送ったもの,自筆本は後年流布本の秀歌例を差替えたもの。和歌の史的展開,和歌本質論,作歌の方法論,本歌取りの技法などについて簡潔に記し,秀歌例をあげる。流布本の秀歌例は本論の部分と対応し,源経信源俊頼藤原基俊藤原顕輔藤原清輔藤原俊成ら,当時での近代の6歌人の秀歌計 27首,自筆本では八代集の抄出本に基づく 83首。自筆本の存在から,定家真作は疑いない。内容は簡潔で要を得ており,定家歌論の考察上きわめて重要。

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改訂新版 世界大百科事典 「近代秀歌」の意味・わかりやすい解説

近代秀歌 (きんだいしゅうか)

歌論書。藤原定家が1209年(承元3)将軍源実朝の依頼で執筆。歌論部は《古今集》の序をふまえた和歌史批判と,その帰結としての作歌理念・表現方法論に分かれ,宇多朝(9世紀末)以前の古歌の尊重,余情・妖艶体の摂取,本歌取り技法による詩情の更新などの立場が提唱されている。巻末秀歌例に近代六歌仙の和歌を引いた初撰の遣送本と,後年,秀歌例を《八代抄》抄出歌にさしかえた自筆本の2系統がある。
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百科事典マイペディア 「近代秀歌」の意味・わかりやすい解説

近代秀歌【きんだいしゅうか】

鎌倉初期の歌論書。1巻。藤原定家著。1209年源実朝に進呈。歌論の部分と秀歌例の部分とからなり,前半では,和歌史批判を通じて〈余情妖艶体〉を提唱し,そのための方法として本歌取り論を展開する。秀歌例には近代六歌仙を引くものと,《定家八代抄》から抄出した秀歌にさしかえたものの2つの系統がある。→詠歌大概

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世界大百科事典(旧版)内の近代秀歌の言及

【歌論】より

…その精神性は〈摩訶止観〉から学んだものであることは,俊成自身が言明しているところである。 俊成の子藤原定家は,《近代秀歌》《詠歌大概》《毎月抄》等の歌論を書いて,俊成の歌論を一歩推し進めた。〈詞(ことば)は古きを慕ひ,心は新しきを求め,及ばぬ高き姿をねがひて〉(《近代秀歌》),〈まづ心深く,長(たけ)高く,巧みに,詞の外まで余れるやうにて,姿気高く,詞なべて続け難きがしかもやすらかに聞ゆるやうにて,おもしろく,かすかなる景趣たち添ひて面影ただならず,けしきはさるから心もそぞろかぬ歌にて侍り〉(《毎月抄》)とあるように,高さや深さという内面性をいっそう重んじている点が注目されるのである。…

【六歌仙】より

…それぞれの個性は明白であるが,共通の特色は真率(しんそつ)でわかりやすく,技巧が少なく,この人々によって和歌史上の一時期が形成された9世紀後半は〈六歌仙時代〉といわれる。技巧が少ないことはかえって内容の充実を意味し,藤原定家はその著《近代秀歌》に〈詞は古きをしたひ,心は新しきを求め,及ばぬ高き姿をねがひて,寛平以往の歌にならはば,おのづからよろしきこともなどか侍らざらむ〉と注意すべき見解を述べている。〈寛平以往の歌〉とは六歌仙を意味する。…

※「近代秀歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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