日本大百科全書(ニッポニカ) 「爆破地震学」の意味・わかりやすい解説
爆破地震学
ばくはじしんがく
explosion seismology
人工的に地震をおこし、地下構造を研究する学問。地球の中を探る手段のなかでもっとも精密な方法で、身体の中をみるレントゲン写真やCTスキャンのように、地球の中をみることができる。震源としては火薬が広く用いられていたために、爆破地震学の名がついた。しかし1980年代以降は、火薬を使うことによる環境や漁業への悪影響が指摘されたことや、他方、人工震源から出てくる地震波の波形や振幅を精密にコントロールすることが学問上たいせつになったことから、圧搾空気を使うエアガンや巨大な錘(おもり)を振り回して振動させるモーターなど、非火薬性で繰り返し可能な震源が広く使われるようになった。このため爆破地震学は、近年では制御震源地震学controlled source seismologyといわれることが多い。
地震波の受信装置としては陸上や海底では地震計が使われるが、海中ではハイドロフォンという水圧を感じるセンサーが使われる。ただしハイドロフォンは水中の圧力変動を感じるものなので、水中は伝わらない地震のS波はとらえられない。
調査したい深さによって、実験の規模にはいろいろある。小規模なものは、ダムや橋などの建造物をつくるときに地下数十メートルを探るものから、大規模なものでは、深さ100キロメートル以上を探るものまである。後者は、アメリカ大陸ではわずかに行われていたが、海底では、日本の地震学者が自ら開発した海底地震計を使って、1970年代に小笠原諸島沖の太平洋プレートが拡がる海底で初めて成功した。これは、約6000メートルの深海底に1000キロメートル以上の距離にわたって数十台の海底地震計を並べて、人工地震を行ったもので、海底にあるプレート全体の厚さにわたっての精密な地下構造を求めることができて、プレートテクトニクスの理解を進めることになった。
[島村英紀]