デジタル大辞泉
「物する」の意味・読み・例文・類語
もの・する【物する】
[動サ変][文]もの・す[サ変]《ある動作をそれと明示しないで婉曲に表現する語》
1 詩文などを作る。「傑作を―・する」「一句―・する」
2 「ある」「居る」、また「行く」「来る」などの意を表す。
「などかく怪しき所には―・するぞ」〈源・明石〉
3 「言う」「食う」「書く」「与える」など、何かを行う意を表す。
「心地あしみして、ものも―・したばで、ひそまりぬ」〈土佐〉
[類語](1)書き下ろす・書き著す・書する・著す
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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もの‐・する【物】
- ( 名詞「もの(物)」にサ変動詞「する」の付いてできたもの。種々の動詞の代わりとして、ある動作をそれと明示しないで婉曲(えんきょく)に表現するのに用いる。人間の肉体による基本的な動作をさす場合が多く、中古の仮名文学に多く用いられた )
- [ 1 ] 〘 自動詞 サ行変 〙
[ 文語形 ]もの・す 〘 自動詞 サ行変 〙- [ 一 ]
- ① ある、居る、生まれる、また、行く、来るなどの意を表わす。
- [初出の実例]「忝けなく、汚なげなる所に年月をへて物し給ふ事、極まりたるかしこまりと申す」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ② 近世、情交するの意をぼかして隠語的にいうのに用いる。
- [初出の実例]「気遣なしに帯とけ、とひとつも口をあかせず、わるごう有程つくして物しける」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)一)
- [ 二 ] 補助動詞として用いる。そういう状態、そういうものであることを表わす。名詞に「に」を添えた形に付くが、間に係助詞のはいる場合が多い。
- [初出の実例]「なみなみの人にもものし給はねば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
- [ 2 ] 〘 他動詞 サ行変 〙
[ 文語形 ]もの・す 〘 他動詞 サ行変 〙- ① 言う、書く、食う、与える、その他種々の物事を行なう意を表わす。
- [初出の実例]「翁人ひとり老女(たうめ)ひとり、〈略〉ものもものしたばでひそまりぬ」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月九日)
- 「そのことかのこと、物すべかりければと」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
- ② 近世、横領する、盗むの意をぼかして隠語的にいうのに用いる。
- [初出の実例]「俺が物せふとしたを、ついおのれに物せられた」(出典:歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)中)
- ③ 作る。完成する。主として、詩や文章などを作り上げるのをいう。
- [初出の実例]「爰に著述(モノ)せし金鵞子の、滑稽笑話を一回開けば」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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