所有権の移転などの物権変動を目的とする法律行為。債権債務関係を生じさせる法律行為である債権行為に対する用語。たとえば、売買契約は、売り主に目的物の所有権を移転する債務を、買い主に代金を支払う債務を発生させる債権行為であり、売り主がその債務の履行として目的物の所有権を移転する行為は物権行為である。もっとも、このように物権行為と債権行為を区別する考え方はドイツ法のとるところであり(さらに物権変動には登記・引渡しなどの形式を必要とするので、ドイツの方式を物権変動における形式主義という)、日本民法が物権変動について採用したフランス法では、この区別をしていない(フランスでは物権変動は意思表示だけで行われる意思主義をとっている)。そこで、物権変動について意思主義をとるわが国で、物権行為を債権行為と区別して考える(物権行為の独自性の理論)ことが有用かどうかが、とくに所有権の移転の時期をいつと考えるかという問題をめぐって論じられるが、物権行為の独自性を認めないのが今日の通説である。
[高橋康之]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…行為者の死亡によって効力の生ずる遺言や死因贈与は死後行為または死因行為で,その他の行為が生前行為である。発生する効果の種類によって,例えば贈与,売買,賃貸借契約のように一定の給付を請求できる債権を発生させるのが債権行為,所有権移転・抵当権設定のように物権の変動を生じさせるのが物権行為,債権譲渡・債務免除・無体財産権譲渡などのように物権以外の権利の処分の効果を生じさせるのが準物権行為で,後2者を処分行為ともいう。財産の出捐(しゆつえん)を目的とする行為がその原因と不可分であるかどうかにより,原因関係に影響されるものが有因行為で,手形行為のように影響されないのが無因行為である。…
※「物権行為」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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