同一の発明について、この条約に加盟した1国に出願すれば、自動的に加盟国すべてに個々に出願したとみなす条約。英語名の頭文字をとって略称はPCT。1970年6月のワシントン外交会議で採択され、1978年1月に発効した。日本は1978年(昭和53)10月に加盟した。国内出願から1年以内に、特許協力条約に基づいて加盟国1国に出願すれば、加盟各国での出願日を原則、国内出願日と同日にできるという利点がある。また通常12か月である出願日の優先権が延長され、加盟国への出願手続は国内出願から30か月以内に済ませばよい。2016年7月時点での加盟国はアメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、イギリス、中国、韓国など150か国(ただし日本は北朝鮮の加盟を認めていない)。なお特許協力条約をもって「世界特許」「国際特許」などとよぶ場合があるが正確ではない。個々の特許を認めるかどうかは世界各国の担当官庁にゆだねられており、特許協力条約加盟国といえども、加盟1国に出願して、すべての加盟国の特許を取得できるわけではない。
特許協力条約は世界知的所有権機関(WIPO(ワイポ))が管理する条約の一つである。「特許は世界各国ごとに独立したもので、各国で与えられ、各国でのみ有効である」との特許独立の原則がパリ条約(工業所有権保護同盟条約)で定められている。特許協力条約は、このパリ条約を補完し、翻訳などの事務負担や事務費用を軽減する目的で採択された。なお特許協力条約をさらに補完する形で、2000年6月には、国ごとにばらばらの出願手続をできるだけ統一・簡素化する特許法条約が採択された。
[矢野 武 2016年11月18日]
略称PCT。同一発明について複数の国に出願する場合にそれまで各国ごとにしていた特許出願を一つの手続でできるようにすることにより国際的な特許の取得を容易にすることを主たる目的とする特許の手続に関する多数国間条約で,1970年6月ワシントン外交会議で採択され,78年1月に発効した。日本は同年10月加盟。現在の加盟国は,アメリカ,ロシア,ドイツ,フランス,イギリス等77ヵ国である(ただし日本は北朝鮮の加盟を認めていない。1995年1月現在)。同条約に基づく手続の概要は以下のとおりである。(1)一つの国際出願によって,指定する複数の国に複数の外国出願をしたのと同一の効果が与えられる。(2)受理された国際出願については,すべての出願について先行技術の有無についての事前調査(国際調査)が行われ,その調査結果は出願人の発明の事前評価および各国特許庁の審査に活用される。さらに(3)出願人からの請求に基づき,その新規性,進歩性,産業上の利用可能性を有するか否かについての予備的な審査(国際予備審査)が行われ,この結果は出願人と各国特許庁に活用される。(4)最終的な特許付与のための審査は,出願人の各国特許庁への翻訳文等の提出をまってそれぞれの国の特許庁によって行われる。こうして出願人と各国特許庁の負担する労力の重複を国際協力により減少させるとともに,国際的な特許情報の公開等を通じて技術情報としての特許情報の利用促進や,発展途上国を含む技術サービスの提供が図られている。
執筆者:三平 圭祐
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(桜井勉 日本産業研究所代表 / 2007年)
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「PCT」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本は未加盟。(9)PCT(特許協力条約) 1970年締結。複数の国で特許保護を受けようとする際の各国ごとの異なる手続による労力を軽減するために締結。…
※「特許協力条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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