自ら発電設備を建設・保有・運営し、大手電力会社へ電力を卸売りしている事業者。英語の頭文字をとってIPPと略してよばれる。日本では、1995年(平成7)の電気事業法改正に基づき、発電市場に競争原理を導入するため、1996年から鉄鋼、造船、石油、ガス、化学会社のように自前で発電した電気をIPPとして大手電力会社(一般電気事業者)へ売却できるようになった。2011年(平成23)の東京電力福島第一原子力発電所事故後は、IPP事業者が風力など再生可能エネルギーの発電施設を保有し、電力を供給する事例も増えている。2016年の電力小売り全面自由化以降、IPP事業者のうち、一般家庭など消費者(契約電力50キロワット未満)向けに電気を販売する小売電力事業に参入する企業が多く、IPPの発電した電力はかならずしも大手電力会社のみに供給されるわけではなくなり、IPPには余剰電力の取引を活発化させる効果が期待されている。なお、日本で大手電力会社に電力を卸している事業者には、発電設備の出力が200万キロワット以下の小規模な「卸供給事業者」と、200万キロワット超の大規模な「卸電気事業者」の2種類がある。IPPは卸供給事業者に該当し、大手電力会社と10年以上・1000キロワット超、または5年以上・10万キロワット超の供給契約を結んでいる。なお、卸電気事業者は、電源開発(Jパワー)と日本原子力発電の2社である。
海外では、電力市場の自由化が進むなか、IPPは急成長を遂げている。すでにアメリカでは1990年代に運転開始した電源の半分以上がIPPを中心とした設備であったとされている。電力需要が急増するアジアや中東諸国では、発電部門への外資導入が進められ、IPPを新たなビジネスチャンスとみた海外企業が積極的に進出しており、商社や電力会社などの日本企業も相次いでIPP事業に参入している。海外のIPPには、自前の発電設備をもたず、複数の工場の余剰電力を集めて販売する企業もある。
[矢野 武 2016年10月19日]
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